☆氷帝hospital☆ 第5話

滝と忍足が病室から出て行ったときとちょうど同じ頃、宍戸は跡部に連れられ、入ったこ
ともない部屋にいた。跡部の話によれば、ここはもう何年も前から使われなくなった手術
室らしい。普通の蛍光灯はつかないにも関わらず、何故だか手術台の真上の電気だけはつ
くという状態になっている。
「こんなとこ来てどうすんだよ?」
手術室というある意味不気味で、あまりよいイメージのないようなところに連れて来られ
宍戸は怖がるような嫌そうな顔をする。
「さっき言ったこと覚えてるだろ?」
「えっ・・・?」
さっき言ったことというと、おそらく休憩室でのことだろう。そのことを思い出し、宍戸
は焦りの表情をあからさまに見せた。
「さっきのこと・・・まだ怒ってんのか?」
不安気な表情で宍戸は恐る恐る問う。跡部は笑いながら否定する。
「まさか。今はただ普通に楽しみたいだけだぜ。」
跡部はじりじりと宍戸を手術台の方へと追いつめる。当然のことながら、宍戸は手術台に
ぶつかり、その上に半強制的に乗せられてしまった。
「わっ・・・ちょっ・・・跡部っ!!」
「少し大人しくしてろ。」
跡部は近くにあった点滴を自分の方へ引き寄せる。点滴といっても当然中身は入っていな
い。跡部は点滴に繋がれている長いチューブで宍戸の手首を縛った。もちろん宍戸は思い
きり抵抗しようとするが、力いっぱい腕を掴まれ、鋭い目つきで睨まれてしまい、大人し
くならざるを得なかった。
「やめろよっ!!」
「お前がさっきあんな態度をとるのがいけないんだろうが。」
「だからって・・・。」
宍戸は縛られた自分の手首に視線を落とす。こんなのありかよ〜と心の中で呟きながら、
ふと視線を跡部に向けた。その瞬間、宍戸は自分の目を疑う。跡部は小さな注射器を取り
出し、透明なビンから薬を入れていた。
「なっ!?ちょっ・・・お前何やって!?」
「別に危ねぇ薬じゃないから安心しろ。」
「嫌だ!!やめろっ!!」
注射をされるなんて冗談じゃないと宍戸は必死で抵抗する。しかし、縛られた腕を押さえ
られ、注射器をつきつけられれば、容易に暴れることは出来なくなる。
「動くと失敗するぜ?」
「うっ・・・やだ、やめろよぉ・・・。」
注射自体はそれほど怖くないのだが、正体の分からない薬を打たれるのが怖いのだ。宍戸
は目に涙を浮かべて、跡部にやめて欲しいことを強く訴える。だが、跡部がそんなことを
聞くはずがない。針の先を宍戸の腕に刺し、血管から直接この薬を投与した。
「いっ・・・!!」
「この薬は即効性じゃねぇからな。やってるうちに効果が出てくるはずだぜ。」
「お前、最悪っ!!」
「ほら、あとは楽しもうぜ。」
「くそっ・・・」
抵抗できないのがくやしくて、宍戸は唇を噛んで泣くのを必死で堪えている。そんなこと
はおかまいなしに、跡部はその口を開かせ、熱く深い接吻を施した。
「んぅ・・・ん・・・ぅ・・・」
唇を重ねたまま、跡部は手術台に乗り、そのまま宍戸を押し倒す。縛られている腕は邪魔
なので、頭の上へと上げさせた。
「すげぇ、いい眺め。」
「・・・ハァ、お前、こんな狭いベッドに二人も乗ってたら落ちるぞ。」
「落ちねぇし、落とさねぇよ。お前は俺様のすることを素直に受け入れりゃいいんだ。」
跡部は宍戸の着ている真っ白なナース服を脱がし始める。ワンピースタイプなので、かな
り脱がしにくいのだが、跡部は慣れた手つきでそれを行った。全てをさらけ出された宍戸
は羞恥心から跡部を目をそらし、横を向いていた。
「ふーん、まだ軽いキスくらいしかしてねぇのに随分と反応してんだな。もう薬が効いて
きてんのか?」
「っ!?」
(そう言われれば、まだ何もされてねぇのに体が熱くなってきてるような・・・。ヤベェ
どうすりゃいいんだ俺!?)
さっき打たれた謎の薬のことを意識した瞬間、宍戸は自分の鼓動がだんだんと速くなって
るのを感じた。このまま進んだら、自分はどうなってしまうのだろうという恐怖が一気に
襲ってくる。だが、そんなことを考えている間に跡部は早く進めようと宍戸は下半身に顔
をうずめていた。
「ひっ・・・あっ!!」
一番敏感で感じやすい場所に口づけをされ、そこが湿った口の中にすっぽりと包まれた。
その上くちゅくちゅと音を立て無駄に弄られる。宍戸は条件反射のように身を震わせ、普
段は出さないような高い声を上げた。
「んっ・・・ぁん・・・はぁっ・・・・」
(うわぁ、マジでヤベェ。絶対いつもより感じてるし。やっぱ、さっき打たれた薬の所為
なのかなぁ・・・)
いつもより素直な反応を見せる宍戸に、跡部はやらしい笑みを浮かべる。そして、美技と
も言えるような舌使いでさらに宍戸を喘がせた。
「やっ・・・ああ・・・!!あっ・・・ぅ・・・」
「随分、イイ声上げてるじゃねぇか。そんなにイイのかよ?」
「ん・・・ぅっ・・・跡部っ・・・さっきの薬・・・・」
「さあ、何だろうなアレ。」
「誤魔化すなっ!!・・・っん・・・あっ・・・」
宍戸はさっきの薬が何であったかを知りたいのだが、跡部はそれを言おうとしない。だが、
体に表れている反応からだいたいの予想はついた。頭の中では最悪だ!!と思いながらも
宍戸はすっかり跡部のテクに酔わされている。
「んんっ・・ぁ・・・あっ・・・跡部っ・・・!!」
執拗な愛撫に耐えきれなくなりつつある宍戸は、切羽詰ったような声を上げ、跡部の名を
呼ぶ。そんな声を聞きながら跡部は一際強く宍戸の熱を吸い上げた。その瞬間、宍戸の身
体は大きく震え、跡部の口の中にたくさんの熱い蜜を放った。
「・・・あっ・・・ああっ!!」
「いつもより早いんじゃねぇ?」
宍戸の放ったミルクを丁寧に舐め取りながら跡部は笑う。宍戸は顔を隠したくて仕方ない
のだが、腕がしっかりと点滴に繋がる形で縛られ、その上、頭の上で固定されてしまって
いるのでそれは出来ない。自然に流れてくる涙が頬を伝い、宍戸はひどく切なげな表情を
見せた。
「・・・・・・。」
「そんな顔すんじゃねぇよ。」
艶やかな黒髪に手を絡め、流れる涙を拭いながら、跡部は優しく囁いた。突然、優しく扱
われ、宍戸はドキドキしてしまう。なるべく目を合わさないように心がけていると、再び
下から全身を貫くような快感が宍戸を襲った。
「ひっ・・・やぁっ・・・!!」
「イイ感じだな。ちょうどいい具合に濡れてるぜ。」
「あっ・・やっだぁ・・・んっ・・く・・・」
「別に潤滑剤使ってるわけでもねぇのに、よくここまで濡れるよな。」
「うるせ・・・っ・・・どうせ、さっきの薬の所為だろっ!!」
「さっきの薬ねぇ。」
意味深な笑みを浮かべて跡部は呟く。しかし、宍戸にはそんなことを気にしている余裕は
ない。何を思ったのか宍戸はぎゅっと目をつぶる。さっきからずっと跡部に振り回されっ
ぱなしなのがくやしくて、声を出すまいと我慢することを決めたのだ。
「・・・んっ・・く・・・ぅっ・・・」
「随分と我慢してるみてぇだな、宍戸。」
「お前ばっか・・・楽しんでて・・・ずりぃ・・・」
声は我慢出来たとしても、息が乱れるのを誤魔化すことは出来ない。跡部が指を動かす度、
宍戸は口を開き、喘ぎかけるがすれすれのところで止める。その代わり、ひどく濡れた吐
息が跡部の肌に触れた。当然のことながら、跡部はその熱い吐息によって興奮してきてし
まう。
「我慢してても無駄だと思うぜ。」
必死で堪えている宍戸をあざ笑うかのように跡部は宍戸の足をさらに大きく開かせ、自分
自身を一気に挿入していった。もちろん気遣うなんてことはしない。いきなり奥の方まで
貫かれ、宍戸は耐えきれない快感に嬌声を上げる。
「あっ・・・ああ――ッ!!」
「ほら、我慢してみろよ。テメーにそれが出来んのか?あーん?」
「あっ・・・やぁっ!!・・・ぁんっ・・ああ・・・!!」
激しく腰を打ちつけられ、もう声なんて抑えられる状況ではない。こんなに激しくされた
ら痛くてたまらないのに、今日はとにかく気持ちイイとしか感じない。跡部もまた、今日
はまた格別にイイ感じだといつもより激しく宍戸を犯しながら、頭の中でそう思った。
「俺様のテクにお前が耐えられるわけねぇよなぁ?」
「はっ・・・あっ・・くっそ・・・んぅっ!!」
「ほら、よすぎてたまんないんだろ?早くイッちまえよ。」
「い・・・やだぁっ・・・んんっ・・・はぁん・・・っ」
煽るようなことを跡部が言うので、その通りになってたまるかと宍戸は達してしまいそう
なのを必死でこらえる。しかし、それがさらなる快感を生み出した。
「あっ・・うぁ・・・跡部っ!!・・・んっ・・んぅ・・・」
「お前のココ、さっきより大きくなってるぜ。」
「ん・・なこと・・・言うなぁっ・・・あっ・・・」
「もう我慢すんなよ。ほら、解放しちまえよ。」
宍戸の顔の真横に顔をうずめ、跡部は低く妖しい声で囁いた。その瞬間、宍戸の背中にゾ
クゾクとした痺れが駆け抜けた。
「はぁ・・・ああ―――っ!!」
「・・・・っ!」
無理やり我慢していたこともあり、宍戸はすぐに達してしまった。それと同時に跡部も宍
戸の中にある自分のモノが急に締めつけられたため、思ったより早く達してしまう。
「あ・・・はっ・・・・」
意識が飛ぶところまではいかずとも、宍戸はかなりぼーっとしている。跡部は自身を宍戸
から抜き、汚れてしまった手術台と宍戸の体をキレイにし始めた。ある程度片づくと宍戸
の手首を縛っていたチューブを解き、体を起こさせぎゅっと抱きしめる。
「たまには、こういうのもいいだろ?」
「お前・・・本当最悪っ・・・」
涙声になりながら、宍戸は跡部に対して不機嫌モードで文句を言った。だが、跡部があや
すように頭を撫でてくるので、次第に気持ちが落ち着いてしまう。
「むぅ〜、もういいけどさ、やっぱあんな薬使うなんて卑怯だぞ。」
「ああ、あの薬か。お前、アレどんな薬だと思ってたんだよ?」
笑いながら跡部は尋ねる。宍戸は恥ずかしそうにうつむきながら答えた。
「えっ・・・その・・・そういう薬だろ・・・?」
「んなわけあるか、バーカ。」
「へっ!?」
「もし仮にそういう薬だとしたら、即効で効くに決まってんだろ。注射器で直接体ん中に
入れたんだぜ?病院関係者ならそれくらい別分かれよな。あれはただのビタミン剤だ。」
「・・・マジで?」
「ああ。ま、プラシーボ効果だろうけど。」
宍戸の耳にはもう“プラシーボ効果”などという言葉は聞こえていない。あの薬がそうい
うものでないとすると、自分は跡部自身に激しく感じていたことになる。それが恥ずかし
くて、宍戸は両手で顔を覆った。だが、耳まで真っ赤になっているので赤くなっているの
はバレバレだ。
「お前、今日はいつもの倍くらい感じてたよなあ。嬉しいぜ宍戸。」
「〜〜〜〜〜っ。」
「俺に感じてくれてたんだろ?」
跡部は実に楽しそうにこんなことを言う。宍戸はもう言葉も出ない。どんなに否定したく
ても事実は事実。もうこの場から逃げ出してしまいたかったが、雰囲気的にそれは不可能
だ。そして、このあと宍戸がとった行動は跡部が想像し得ず、宍戸自身も驚くような行動
だった。
「・・・・うだよ。」
「は?何だって?」
「そうだよ!!俺は跡部が好きだからな!!お前にあーいうことされると素直に感じちま
うんだ!!悪ぃかよ!!」
そう言いながら、宍戸は跡部の胸ぐらをつかみ、噛みつくようにキスをする。跡部は唖然
としながも、宍戸の手がひどく震えていることに気づいて、ふっと笑った。
「別に悪いなんて一言も言ってねぇじゃねぇか。」
「・・・・・っ!!」
「さっきから言ってるだろ?お前が俺の手で気持ちよくなることは、俺にとって嬉しいこ
とだってよ。」
優しく髪をかき上げ、跡部は宍戸の額に口づける。さっきとは比べものにならないくらい
優しく扱われ、宍戸は困惑しながらも跡部に対してトキメいてしまった。自ら腕を伸ばし、
跡部の首に腕を回すと宍戸は頭を肩にうずめる。
「お前、ズリィよ・・・。」
「それはお互い様じゃねぇの?」
素直に甘えられて跡部も一瞬ドキっとさせられてしまった。後頭部に手を置き、もう片方
の腕で背中をとらえ、自分の方へ引き寄せる。それが心地よくて宍戸は落ち着いたような
表情で目をつぶった。
「もう少ししたら、戻ろうな。」
「おう・・・」
そんなことを話しながらも、二人は離れるという気配は全くない。しばらくこの何とも言
えない甘い雰囲気に跡部と宍戸は浸り続けるのであった。

                     to be continued

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