色とりどりのイルミネーションやクリスマス・ソングが街に溢れている12月、高校生に
なった氷帝学園テニス部レギュラーメンバーは、うきうきと胸を躍らせていた。街並みが
クリスマスカラーに染まるのと同じように、彼らの頭の中もクリスマスカラーに染まって
いる。
「そろそろクリスマスだねぇ。宍戸は跡部にプレゼント何あげるかとか決めたの?」
「いや、まだだぜ。跡部にあげるプレゼントって誕生日にしろ、クリスマスにしろ、いっ
つも迷うんだよな。」
「確かに。跡部は金持ちだから欲しいと思ったものは何でも買えちゃうしねー。」
宍戸と滝がクリスマスのことについて、廊下で話をしていると、たまたまそこを通りかか
った忍足が話しかけてくる。
「あれ?珍しい組み合わせやん。何の話しとるん?」
「クリスマスプレゼントの話だよ。そろそろクリスマスだろ?」
「あー、そういえばせやったな。もう12月やもんな。」
「忍足は岳人に何あげるかとか決めてるのかよ?」
「まだやで。そういう自分らはどうなん?」
「俺達もまだ。だから、今どうしたらいいのかなあって話してたところ。」
「なるほどな。せやったら、次の休みにでも一緒に見に行かへん?一人で考えるより、み
んなで考えた方が意外といいの見つかるかもしれへんし。」
「いいねー。あんまり一緒に出かけないメンバーだから、自分の思ってもみない意見とか
出してもらえるかもしれないしね。」
「俺も賛成。次の休みは特に予定入ってねぇしな。」
話の流れで忍足が出した提案に滝と宍戸はかなり乗り気だ。プレゼント選びは他の人の意
見を聞くのも大事だと考えたのだ。三人がプレゼント選びの日程の話をしていると、大き
なあくびをしながら、ジローが屋上から戻ってきた。
「あっ、ジロー。」
「ふあ〜、あれ?何かめずらC〜メンバーだね。」
「忍足と同じこと言ってるし。今ね、次の休みにクリスマスプレゼントを見に行こうかっ
て話をしてたとこなんだ。」
何だか面白そうな話だと、ジローは眠そうな顔を一変させて話に加わる。
「マジマジ!?何かそれ、超ー面白そうだCー!!」
「ジローはクリスマスプレゼント何買うとか、もう決めとるん?」
「樺地に?ううん、まだ全然。」
「だったら、ジローも一緒に来る?うまい具合にそれぞれのペアの片割れだけそろったこ
とだし。」
「うん、行く行くー。プレゼント選びって、何かわくわくするな!!」
クリスマスプレゼント選びという言葉を聞き、ジローは一気にテンションが上がる。あま
りに楽しげな様子のジローを見て、他の三人もつられて笑った。
「確かにわくわくするよな。何あげれば喜んでくれるだろうとか、どんな顔するんだろう
とか考えて選ぶからな。」
「そうだね。ふふ、何か次の休みがすごく楽しみになってきたよ。」
「せやなあ。今年はバイトとかも始めたし、結構いいもん買えると思うで。」
「俺も俺もー。樺地、何あげたら喜ぶかなあ。」
四人とも実に生き生きとした表情で、パートナーにあげるプレゼントのことを考える。次
の休みは絶対に相手が喜ぶようなプレゼントを見つけてやろうと心に決めて、しばらくそ
の日の話で盛り上がった。
ところ変わってここは、職員室前。どういうわけか、先程話していたメンバーのパートナ
ーがここに集まっていた。
「あれ?跡部と樺地も職員室に用があったのかよ?」
「生徒会の所用でちょっとな。テメェこそ、何でこんなところにいやがる?」
「ちょっと担任に呼び出されててよー。ま、大した用じゃねぇんだけど。」
「また、赤点でも取りやがったのか?アーン?」
「ぐっ・・・ちっげーよ!!」
「図星だな。」
「ウス。」
「なっ、樺地まで!!ひっでぇ!!」
岳人と跡部が職員室の前でギャーギャーと言い合っていると、職員室から今まさに出てき
た鳳が三人を見つける。
「あっ、跡部さんと向日先輩。それに樺地。」
「おー、鳳じゃねぇか。聞いてくれよ、跡部と樺地ったらひでぇんだぜ!!」
「アーン?事実を言って、何が悪ぃ。」
「何だとー!?」
「まあまあ。ここ職員室の前なんで、あんまりうるさくしちゃダメですよ。」
「ウス。」
後輩メンバーに注意されて、跡部と岳人はさすがに大人げなかったと押し黙る。何となく
気まずい雰囲気になってしまったので、この空気を何とかしようと、鳳は全く違う話題を
二人にふる。
「そ、そういえば、先輩達はクリスマスプレゼント何買うとかもう決めました?」
『クリスマスプレゼント?』
「そろそろクリスマスじゃないですか。今年も宍戸さんや忍足先輩にあげるんですよね?」
「そりゃまあな。」
「おう。でも、まだ何あげるとかは決めてねぇ。」
クリスマスプレゼントの話をすると、二人の態度ががらっと変わったので、鳳は一安心す
る。特に顔や態度に表していないが、樺地も同じ気持ちであった。
「俺もまだ何をあげるとか決めてなくて。よかったら、先輩達、何かアドバイスくれませ
んか?」
「だったら、俺もアドバイス欲しいくらいだぜ。プレゼントとか決めるのって、結構苦手
でさあ。」
「確かに、宍戸の喜ぶもんって意外と難しいんだよな。あんまり高価なものも嫌だとか言
いやがるし。鳳なら、ダブルスのパートナーだし、少しは宍戸の喜ぶようなもんとか分か
るのか?」
「まあ、少しは。だったら、今度ここにいるみんなでプレゼント見に行きませんか?」
なかなかない組み合わせなので、少し迷う二人だったが、悪くはない提案だと鳳の言葉に
頷く。
「何か・・・微妙なメンバーではあるけど、悪くはないと思うぜ。」
「テメェに言われたくねぇよ。でも、ここにメンバーでプレゼント選びに行くってのも少
し面白いかもしれねぇな。」
「ウス。」
「じゃあ、決まりですね。いつにします?」
「次の部活のオフ日でいいんじゃねぇ?休みだと、俺、用事入っちまってるし。」
「俺も次の休みは、バイオリンのレッスンがあるんで、オフ日の方が都合がいいですね。」
「跡部はどうなんだよ?」
「別にいつでも構わねぇぜ。なあ、樺地。」
「ウス。」
「そんじゃ、プレゼント選びは次のオフ日で決まりだな。HRが終わったら、昇降口でお
ちあおうぜ!」
プレゼント選びの日取りが決まったところで、ちょうど昼休みの終わりを告げるチャイム
が鳴る。何だか変わったメンバーで出かけることになったが、それはそれで面白いと思い
つつ、四人はそれぞれの教室に戻っていった。
プレゼント選びの日程が早いのは、跡部率いる職員室にいたメンバーであった。この前の
約束通り、昇降口の前で待ち合わせをし、ショッピングモールへと向かう。ショッピング
モールへ向かう途中で、最近宍戸がどんなものを欲しがっているかを跡部は鳳に尋ねた。
「鳳、最近、宍戸のヤツ、何か欲しいものがあるとかそういう話したか?」
「そうですねぇ、確か新しいジーンズが欲しいとか言ってました。普通のじゃつまらない
からレアなものが欲しいらしいんですけど、高くて買えないとか言ってましたよ。」
「ジーンズか。でも、ジーンズでレアなものってどういうのか分かんねぇなあ。」
「レアって、数が少ないってことだろ?だったら、普通のジーンズ買って、跡部が加工す
ればいいんじゃねぇ?」
跡部と鳳の話に岳人は口を挟む。しかし、跡部はそこまで今のファッションに詳しくない
ので、岳人の言っている加工の意味が分からなかった。
「加工ってどういうことだ?」
「ほら、わざと穴開けたりとかボロボロにしたりとかして穿いてる奴いんだろ?あれは、
もともとは普通のジーンズで、オーダーメイドでだったり、自分でやったりして、あーい
うふうにしてんだよ。まあ、穴開けたりとかじゃなくて、ペイントしたり、ポケットを変
えたりすんのも加工の中に入るけどな。」
「へぇ、詳しいんですね、向日先輩。すごいです。」
「へへーん、だろ?」
「確かに俺様が加工すれば、そのジーンズは世界に一枚しかねぇんだから、レアではある
よな。」
「そうですね。レア度はかなり高いですよ。」
「それをプレゼントとして渡したら、宍戸は喜ぶと思うか?」
「そりゃ喜びますよ。跡部さんが手を加えたジーンズなんて、ある意味手作りみたいなも
のじゃないですか。俺はそういうものもらったら嬉しいと思いますけどね。」
「まあ、デザインにもよるだろうけど。跡部のセンス、すっげぇもんな。」
からかいを込めた口調で、岳人は言う。その言葉にカチンと来る跡部だが、ここではそん
な態度を表さず、絶対すごいものを作ってやるという意気込みにその気持ちを変えた。
「だったら、俺は宍戸へのプレゼントはそれにするぜ。要するに今日はジーンズを買えば
いいってことだよな。」
「まあ、そうなりますね。向日先輩はどうするんですか?」
跡部のプレゼントの見当がついたところで、鳳は岳人に話をふる。
「うーん、まだ迷ってんだけどよ、最近テープレコダーの調子があんまりよくないって、
言ってたんだよなあ。だから、新しいテープレコーダーでもプレゼントしてやろうかなあ
と思ってるんだけどよ。」
「へぇ、いいんじゃないんですか?忍足先輩、きっと喜びますよ。」
「そう思うか?じゃあ、それにしようかなあ。」
「アイツ、まだテープレコーダーなんかで聞いてやがんのか?」
「好きな曲が曲だからな。しょうがねぇだろ。」
「物好きな奴だよなあ。なあ、樺地。」
「ウス。」
そんな会話をしているうちに四人を乗せたバスはショッピングモールに到着した。今度は
歩きながら、今までしていた話の続きをする。
「で、鳳は滝に何あげるんだよ?」
「それがなかなか決められなくて。滝さん、どんなものあげたら喜ぶと思います?」
そんなことを尋ねられて、跡部と岳人は滝がどんなものを好むかを考える。ぶっちゃけ鳳
のあげるものなら何でも喜ぶのではないかと言いたかったが、それでは何の参考にもなら
ない。
「滝の趣味って、生け花と読書だったよな?」
「確かそうだったと思うぜ。」
「だったらさ、花束とかでも普通に喜ぶんじゃねーの?俺とかはあんまりもらっても嬉し
くはないけど、滝だったら、きっと喜ぶと思うぜ。」
「まあ、生け花が趣味なくらいだからな。花言葉とかにも詳しそうだしよ。そういうとこ
ろも気にしてやれば、よりいいんじゃねぇの?」
「花束ですか。いいかもしれませんね。」
「樺地、一度そういう本読んで覚えてんだろ?どんなのがいいか、鳳に教えてやれ。」
「ウス。」
「本当?教えてもらえると、すごい助かるよ。」
「ウス。」
樺地がある程度の花の花言葉を暗記しているというのを聞いて、鳳は嬉しそうな顔になる。
「樺地は?樺地はジロー先輩にあげるプレゼントもう決まってるの?」
「ウス。」
鳳の問いに樺地は頷きながら返事をした。さすが樺地だなあと鳳は関心する。
「よーし、これで何を買うかはだいたい決まったし、どっから回る?」
「ここからだと、電気屋さんが一番近いんじゃないですか?向日先輩のテープレコーダー
から行きましょうよ。」
「別にどこからでも構わねぇぜ。そんなに時間がかかんねぇならな。」
「じゃ、まずは電気屋からだな!」
早速買い物を始めようと、四人は自分の買いたいプレゼントが売っている店を順々に回っ
て行く。デザインや値段にこだわりつつ、相手に喜んでもらおうと、四人はお互いに協力
しながら、パートナーへのクリスマスプレゼントを買っていった。そこにいた全員がプレ
ゼントを買い終わった時には、もう日は完全に沈んでしまい、辺りはイルミネーションが
輝き始めていた。
「随分時間かかっちまったな。」
「でも、時間かけたおかげで、かなり納得出来るもんが買えたと思うぜ。」
「ウス。」
「クリスマス当日が楽しみですね。きっとみんな喜んでくれますよ。」
満足のゆくプレゼントが買え、四人は嬉しそうな表情で買ったものを抱える。クリスマス
当日までは後一週間と少し。その日が楽しみだということを話しながら、四人は家路を辿
っていった。
跡部達が買い物に行ってから数日後、滝や宍戸、忍足やジローは私服を着て、ショッピン
グモールに来ていた。
「おまたせ〜。ちょっと寝坊しちゃった。」
いつも通り、約束の時間より少し遅れてジローがやってくる。ジローが遅れてくることは
予測済みなので、待っていた三人は他愛もない話をして時間をつぶしていた。
「遅いぞー、ジロー。」
「ゴメンってば。でも、俺にしては頑張った方なんだぜ。」
「まあ、いつもは30分とか1時間とか余裕で遅れてくるもんな。」
「だろー?俺、エライ!」
「別に偉くはないやろ。遅れてきたことには変わらんのやから。」
忍足につっこまれて、ジローはぶーっと頬を膨らませる。そんな顔が面白いと宍戸と滝は
くすくす笑った。
「とりあえず、そろったことだし買い物行こうよ。」
「どこ行く?」
「んー、いろいろ見たいし、デパートとか百貨店とかでいいんじゃない?」
「まあ、まだ何を買うとかもハッキリ決まってないしな。いろんなもんが見れる店の方が
ええやろ。」
全員がそろったということで、四人はショッピングモールの中心にある百貨店へ向かって
歩き出した。百貨店に到着すると、四人は中にあるいろいろな店を見て回る。一番始めは
小物やアロマグッズなどが売っている雑貨屋さんに入った。
「へぇ、なかなか面白いものが売ってるね。」
「せやな。あんまりこないな店には入らんから、見てておもろいわ。」
「わあ、この枕、超いい感じだC〜!!」
普段は入らないような店なので、四人とも興味津々とばかりにそこに並んでいるものを見
る。そんな中、宍戸は一つ気になるものを見つけた。
「あっ。」
「どないしたん?宍戸。」
「何かプレゼントとしてよさそうなものあった?」
「いやー、このマグカップ、ちょっといいなあと思ってよ。」
そう言いながら、宍戸が手にしたマグカップには、可愛らしい黒猫のイラストが描かれて
いた。
「跡部さぁ、黒猫好きみたいなんだよな。黒猫飼ってるし、俺にも黒猫の格好させ・・・」
『へぇ。』
途中まで言って、宍戸は自分の言っていることの凄さに気づく。真っ赤になって、誤魔化
そうとするが、もう遅い。
「い、今のは何だっ、口が滑って・・・」
「確かに跡部は、黒猫大好きだよね。ねぇ、忍足。」
「せやなあ。」
「そのマグカップ、跡部にあげたら喜ぶと思うよー。そこに描かれてる黒猫、超可愛いC
〜。」
「そ、そっか?じゃあ、これ、買おうかなあ。値段も俺が買えるくらいのだし。」
他のメンバーの言葉を聞いて、宍戸はよりそのマグカップに心を奪われる。跡部が喜んで
くれるのならばと、宍戸はそれを買うことにした。
「じゃあ、俺、ちょっとこれ買ってくるな。」
「うん。俺達はもうちょっと見てるよ。」
宍戸がレジに向かうのを見送ると、三人はニヤニヤ笑いながら小声で話す。
「跡部にとってはさ、絶対黒猫イコール宍戸だよね。」
「それをただの黒猫好きって思ってるあたり、さすが宍戸やな。」
「黒猫が好きじゃなくて、宍戸のことが好きなんだよねー。そんな黒猫が描かれてるマグ
カップなんてもらったら、跡部どんな反応するんだろ?ちょっと見てみたいC〜。」
「まあ、それはちょっと難しいかもだけどね。」
自分のイメージの動物だとは知らずに、宍戸はそれを買って嬉しそうな顔で戻ってくる。
あまり高価なものではないが、自分としてはなかなか納得のいくプレゼントだと宍戸は思
っていた。
「買ってきたぜ!!」
「いいのが見つかってよかったやん。」
「おう!跡部喜んでくれるかな?」
「大丈夫だって。絶対それ、跡部喜ぶよ。」
「へへへ、そっか。」
他のメンバーのお墨付きをもらい、宍戸はさらに笑顔になる。何だか普段の宍戸と違って
少し可愛いなあと、三人はくすくす笑った。宍戸がいい感じのプレゼントを買えたので、
他の店に移動しようかと話していると、ジローが自分もプレゼントをここで買うと言い始
める。
「あ、俺もね、ここでプレゼント買おうと思うんだ。だから、ちょっと待ってて。」
「へぇ、何買うん?」
「枕!!」
「それ、ジローの欲しいものじゃないの?」
「違うよ。樺地、最近寝不足なんだって。だから、ぐっすり眠れるようにラベンダーの匂
いがついた枕を買ってあげようと思ってさ。」
「樺地も忙しいからねぇ。なかなかいいプレゼントなんじゃない?」
「そうだな。高等部に入っても、跡部の手伝い結構してるみてぇだし。」
「そうなんだよ。だから、枕がプレゼントなんだぜ。すぐ買ってくるから、先に店の前に
出て待っててくれよな。」
「おう。ちゃんとラッピングしてもらえよ?」
「分かってるって。」
今度はジローが大きな枕を持って、レジの方へ向かって行った。ラッピングに少し時間が
かかったが、数分もしないうちにジローは三人のところに戻ってくる。
「お待たせー。」
「いかにもプレゼントって感じだね。」
「結構大きな枕なんやな。」
「樺地がおっきいからね。やっぱり枕もおっきい方がいいかなあって思ってさ。」
ラッピングされた大きな枕を抱えながら、ジローはにこにこしてそんなことを言う。滝と
忍足は、もっと他のものも見てみたいとここの店では特に何も買わなかった。
「滝は長太郎にどんなのあげようと思ってんだ?」
百貨店内の他の店に移動しながら、宍戸は滝に尋ねる。
「うーん、美術系か音楽系のがいいと思うんだけどね。具体的に何にしようかはまだ決め
てないんだ。」
「鳳はテニス以外だったら、完全に芸術系やもんな。」
「何がいいんだろうね?」
「そういや、この間、色鉛筆をそろそろ買い換えたいみたいなこと言ってた気がするぜ。
何か写生とかに使ってる奴みてぇだけど。」
「長太郎が使ってる色鉛筆って、確か水彩色鉛筆だよね。あー、それは結構いいかも。」
「せやけど、水彩色鉛筆って、結構高いんちゃうん?」
「確かにそうだけど、長太郎が欲しがってるものだったら、少しくらい高くても問題ない
よ。色はやっぱり今までより多いのがいいよね。」
「じゃあ、画材屋さんに行ってみたらいーんじゃない?あるよね?確か。」
「ああ、あったと思うぜ。」
「ほんなら、次は画材屋さんやな。」
滝が鳳にあげるプレゼントの見当がついたので、それが売ってそうな店に移動する。画材
屋さんでいろいろ見て回った結果、滝は60色入りの水彩色鉛筆をプレゼントとして買っ
た。少し値は張ったが、滝としては非常に満足のゆくプレゼントであった。
「これなら、長太郎もきっと喜んでくれるね。」
「すごいなあ、60色って。どんなふうに色の名前分かれてんだよ?」
「細かく分かれてるんちゃうん?よく分からんけど。」
「あとは、忍足のプレゼントだけだよねー。どんなのにすんの?忍足。」
「あー、せやな。アクセサリーショップとか見に行きたいんやけど、ええか?」
『もちろん。』
宍戸、ジロー、滝は自分の納得いくようなプレゼントを購入出来たので、ご機嫌な様子で
忍足の言葉に頷いた。アクセサリーショップにやってくると、忍足はとあるモチーフのア
クセサリーを中心にプレゼントを考える。
「うーん、どんなのがええんやろ?」
「だいたい何買うかは決まってるの?」
「岳人、羽根モチーフのアクセサリー集めとるやろ?だから、そのあたりでプレゼント考
えようかなて思てるんやけど。」
「いいんじゃねぇ?羽根モチーフだと、そこにかかってるチョーカーとか、あと、ここら
へんにある腕輪とか指輪じゃねぇ?」
「チョーカーよりは、腕輪とか指輪の方がいいかもしれへんなあ。ネックレス系は確かい
っぱい持ってるはずやから。」
そんなことを呟きながら、忍足は腕輪や指輪が並ぶショーケースを見る。順番に目を移し
ていくと、一つの指輪が忍足の目にとまった。
「この指輪、なかなか格好ええな。」
「どれどれ?」
「これや。」
『おー。』
忍足が指差す指輪を見て、三人は同時に声を上げる。忍足の指の先には、羽根が丸まった
ようなデザインの指輪が置かれていた。
「かっこEー!!」
「それほどゴテゴテしすぎてるわけでもねぇし、だからってシンプルすぎるわけでもねぇ
し、なかなかイイデザインなんじゃねぇ?」
「そうだね。勢いのある羽根の感じが岳人にピッタリだし。」
「コレ、ええなあ。俺も気に入ったわ。」
たまたま目に入った指輪に忍足はひどく魅せられる。デザインも雰囲気も岳人にピッタリ
で、クリスマスプレゼントとしてはもってこいの指輪だと、思わずにはいられなかった。
「これ、絶対いいよ!!岳人、絶対喜んでくれるって!!」
「俺もそう思うぜ。俺も欲しいと思うくらいだもんよ。」
「せやなあ。俺もそう思うし。俺のプレゼントはこれでええかな?」
「うん!!マジカッコEーし、クリスマスプレゼントとしては最高だと思うぜ!」
「ほんなら、決まりやな。」
他のメンバーの意見もかなり肯定的なものだったので、忍足はこの指輪を買うことにする。
いい感じのプレゼントが見つかってよかったと、忍足はふっと口元を緩ませた。
「これで、全員買えたな。」
「まだ、結構時間あるし、お昼でも食べに行こうか。たまには、このメンバーでご飯食べ
るってのも悪くないよね。」
「賛成ー!!ちょうど腹減ってきたとこだCー。」
「ええと思うで。」
「じゃあ、行こうか。」
それぞれいい感じのプレゼントが買えたと、心を弾ませながら四人は昼食を食べに向かう。
昼食を食べながら、四人はクリスマスをどんなふうに過ごしたいかという話題で盛り上が
った。クリスマスまで、もう一週間をきっている。年に一度のクリスマス。一番好きな人
と過ごす時間を楽しみにしながら、四人はそれぞれ自分の想いを語り合うのであった。
to be continued