戦国乱舞 〜其の四〜

今日の任務を終え、一旦氷帝城に戻った岳人と忍足は、忍者服から私服に着替え外出する。
行き先は氷帝城の近くの城下町。特にこれといった用はないが、ただぶらぶらとするだけ
でも、二人にとっては十分に楽しめる場所であった。
「んー、やっぱ仕事の後は遊ばなきゃだよな!」
「せやな。意外と神経使うからなー。あーいう仕事は。」
「そうそう。さてと、まずはどこに・・・」
どこへ行こうかと岳人が考えていると、広場の方からにぎやかな声が聞こえてくる。
「何やろな?」
「とりあえず、行ってみようぜ!」
何か楽しそうだと、岳人は忍足の手を引き、声のする方へ向かう。そこでは、曲芸師によ
る軽業や蜘蛛舞が行われている。
「おー、すっげぇ!!」
「へぇ、すごいなー。こりゃなかなかおもろいわ。」
綱渡りや梯子を使ったパフォーマンスを見て、二人は興奮しながら拍手を送る。一通り曲
芸師のパフォーマンスが終わると、口上役の者が挑戦者を募ると言い出す。そんな言葉を
聞いて岳人はすかさず手を上げた。
「俺、やる!!」
やる気満々な岳人に忍足は、小さな声でつっこむ。
「一応、俺達忍者なんやから、そないに目立つことはせん方がええって。」
「大丈夫だって。」
「全く、しょうがあらへんなあ。」
注意をする忍足の言葉に聞く耳を持たず、岳人は群衆の前へ出る。そして、曲芸師が見せ
いたパフォーマンスより派手で高度な技を次々と繰り出していく。
「よっ・・・ほっと・・・」
綱の上で月面宙返りをしたり、片手で綱にぶら下がり、そこからひょいっと飛び上がり、
再び綱の上に乗ったりする。そんな岳人のパフォーマンスに、観客達は歓声を上げ、盛大
な拍手を岳人に浴びせる。曲芸師と口上役はただただ唖然とするばかりで、言葉を失って
いた。
「よっし、最後決めるぜ!」
そう言いながら、岳人は綱を蹴り、大きく飛び上がった。かなりの高さがあるところから
飛んだので、そこにいた観客達は全員息を呑む。地面までの数メートルの間に、岳人はく
るくると何回転かし、すとんと地面に足をつける。何が起こったのか理解出来ず、一瞬辺
りは静まり返ったが、すぐに大歓声が響き渡った。
「へへへ、大成功。」
拍手喝采を浴びつつ、岳人は忍足に向かってピースをした。初めは岳人の行動に少々呆れ
ていた忍足であったが、あんなものを見せられては感心するしかなかった。岳人のパフォ
ーマンスに感動した観客達は岳人に向かって御捻りを投げる。
「おっ、ラッキー♪」
自分に向かって投げられた御捻りを受け取り、岳人は一礼をして、忍足のもとへ戻る。
「お疲れさん。」
「楽しかったし、金もらえたし、一石二鳥だな!!」
「まあ、確かにアレはすごかったもんなあ。曲芸師の人、形無しやん。」
「挑戦者求むって言うからやってやっただけだぜ?」
だから別に問題はないと、岳人はご機嫌な様子で笑う。そりゃそうだけどと忍足は苦笑し、
悔しそうにしている曲芸師の方をチラっと見た。ちょっと可哀想だなあと思いつつも、忍
足は岳人を連れて、その場所を後にした。
「少しお金入ったしー、何か奢ってやるよ、侑士。」
「ホンマか?なら、何奢ってもらおうかなあ・・・」
そんな会話をしながら、岳人と忍足の二人はてくてくと街中を歩いて行く。もらった御捻
りで何を食べようかと考えていると、とある店の者に声をかけられる。
「おー、ちょうどよかった。そこの忍足侑士、ちょっと頼みたいことがあるんやけど。」
「はあ?誰や?」
声のする方を振り返って見ると、そこはたこ焼き屋であった。店ではたこ焼き屋である白
石が忙しそうにたこ焼きを焼いている。
「そろそろ粉がなくなりそうで、買い出しに行きたいんやけど、今店には俺一人しかおら
んねん。ちょっとの間でいいから、店番頼まれてくれへん?」
「謙也とか他の奴らはどないしたん?」
「今日は朝からどっか行っていないねん。自分たこ焼き焼けるやろ?」
「焼けるけど、面倒やなあ。」
「そう言わんといて、ほんのちょっとの間だけでええから。」
「少しくらいいいんじゃねぇの?侑士。俺らそんなに忙しいってわけじゃないし。」
「岳人がそう言うなら・・・」
「おおきに。すぐ帰ってくるからな。」
岳人と忍足に店番を任せると、白石は慌てた様子で、買い出しに行った。仕方ないと忍足
は店に入り、たこ焼きを焼き始める。
「あいつって、確か侑士の従兄弟の友達だよな?」
「ああ。そうやで。」
「何か大変そうだな。」
一人店に残され、仕事をしなければいけない状況を見て、岳人は苦笑しながらそんなこと
を言う。きっと他の奴らはサボっているんだろうなあと思い、白石に軽く同情した。
「そしたら、あいつが帰ってくるまでに俺らがたくさん売ってやろうぜ。」
「まあ、悪くはない提案とは思うけど・・・・」
「よし、それなら決まりだな!!」
ただ店番をするだけでは面白くないと、岳人は張り切って客寄せを始める。岳人の客寄せ
で集まってきた客が忍足の焼いたたこ焼きを買い、そのたこ焼きを食べる。忍足の焼くた
こ焼きは絶品なので、食べた客が他の客を呼び、岳人の客寄せとの相乗効果で、さらに客
が増える。いつの間にか、忍足がたこ焼きを焼く手を休めることが出来ないほど、たくさ
んの客が集まってきていた。
「岳人、客寄せはもうええから、箱詰め手伝って!!」
「了解!!」
忍足が焼くたこ焼きを岳人が次から次へと箱に詰めていき、次々に売っていく。客足が落
ち着いてくる頃には、材料がもうほとんどないという状態になっていた。そこへちょうど
白石が買い出しから戻ってくる。
「遅うなって悪かったな。」
「材料、ほとんどもうないで。」
「へっ!?いくら足りなくなりそう言うても、作ってある分はかなりあったはずやで。」
「本当だぜ。ほら。」
そう言いながら、岳人は白石にあとほんの少ししか残っていないたこ焼きのタネを見せる。
それを見て、白石は目を丸くした。
「ホンマやな。この短時間でどんだけ売ったん?」
「かなり売ったで。とりあえず、これで店番は終わりでええよな?」
「ああ。店番してくれて、たくさん売ってくれたお礼ってことで、これから作るたこ焼き
タダで持っていってええで。」
足りなくなったタネを買ってきた粉で増やし、白石は新しくたこ焼きを焼き始める。出来
上がったたこ焼きを三皿ほど、白石は岳人と忍足に渡した。
「おおきにな。侑士。向日。」
「別にいいってことよ。な、侑士。」
「ああ。それじゃあまたな。あ、謙也に宜しく言っといてな。」
「ああ。じゃあな。」
たこ焼き屋の白石と別れると、二人はたこ焼きを座って食べれそうな場所を探す。少し歩
くと『お休み処』と書かれた長椅子があったので、二人はそこでもらったたこ焼きを食べ
ることにした。
「侑士、食べさせてやるよ。」
「別に自分で食べれるって。」
「俺がしたいんだから、やらせろよ。」
ちょっとでもイチャイチャしたいと、岳人はそんなことを言いながら、忍足にたこ焼きを
食べさせる。別に断る理由もないので、忍足も素直に口を開け、岳人に食べさせてもらう。
そんなことをしながら、たこ焼きを食べ進め、もう少しで一皿目を食べ終わるというとこ
ろで、岳人の目に見知った顔が映った。
「あっ、あいつら。」
「ん?誰か知ってる奴でもおったん?」
「比嘉水軍の奴らじゃねぇ?」
岳人の指差す方向には、比嘉水軍の甲斐と平古場が歩いていた。城に戻ったときに、滝と
鳳が比嘉水軍に助けてもらったというような話をしていたので、自然と目に入ってきたの
だ。せっかくなので、白石にもらったたこ焼きを一皿あげようと、岳人は二人に声をかけ
る。
「おーい、お前ら、ちょっとこっち来いよ!」
岳人に声をかけられ、何だろうと顔を見合わせながら、甲斐と平古場は岳人と忍足のもと
へやって来る。
「何の用だ?」
「お前ら、たこ焼き食わねぇ?さっきすぐそこのたこ焼き屋でもらったんだ。」
「もらった?買ったんじゃなくてか?」
「店番したお礼ってことでな。俺の知り合いの店やから、味は保証するで。」
「何でお前らが俺達にたこ焼きくれるば?一応、顔見知りではあるけど。」
「さっき、城で滝とかからお前らが活躍してたぜーって話を聞いたからさ。」
海での戦いを見てた奴がいるのかと、二人は納得して、岳人からたこ焼きを受け取る。
「ありがとーな。」
平古場がそう言って、たこ焼きを手にすると、岳人はさっきから気になっていたことを口
にした。
「その着物さー、普通に違和感なく着こなしてるけど女物だよな?」
平古場が今上着として羽織っているのは、海での戦いで見つけたあの紅色の着物であった。
女装をする気はないが、着ないのはもったいないということで、平古場は女物のその着物
を男っぽい感じで着こなしていた。
「今日、敵船で見つけたんだばぁよ。」
「へぇ、何かオシャレだよな。」
「似合ってるしな。センスええよな。」
「だってよ、凛。よかったな。」
岳人と忍足に着物の着方を褒められて、平古場は照れくさそうに笑う。水軍の中でも流行
やオシャレには人一倍敏感なので、その部分を褒められるのはかなり嬉しいことであった。
「へへ、そう言われると普通に嬉しいさー。」
着物の話から他の話題に移り、四人はしばらくその場で軽く雑談をする。しばらく他愛も
ないことで盛り上がっていた四人であったが、ふと何かを思い出したかのように甲斐が声
を上げた。
「そうだ、俺達これから買い物行かなきゃいけないんだった。」
「そっか。いやー、結構楽しかったぜ。また、どこかで会ったら話そうな。」
「ああ。じゃあ、またな。」
なかなか楽しかったと、甲斐と平古場は岳人と忍足にひらひらと手を振り、その場を後に
する。外出用の着物で街に来てはいるが、仕事に必要な道具も買わなければいけないこと
になっていたのだ。
「さてと、もう一つ残ってる方も食っちまうか。」
「せやな。」
甲斐と平古場に一皿渡したが、岳人と忍足の手元にはあと一皿たこ焼きが残っていた。
残すのももったいないので、この場で食べてしまおうと、残りのたこ焼きを食べ始めた。

一方、岳人や忍足と別れた甲斐と平古場は歩きながら、もらったたこ焼きを食べていた。
かなりの時間が経っているにも関わらず、そのたこ焼きはまだ熱々であった。
「はふっ、これ、まだ結構熱いな。」
「ああ。もっと冷めてるのかと思ったけど、全然冷めてないんだな。でーじ美味いし。」
「な。これをただでもらえたのはラッキーだったな。」
あまりの美味しさに二人は舌鼓を打ちながら、パクパクとそれを食べる。歩きながら食べ
ているにも関わらず、あっという間にそれはなくなってしまい、最後の一個になってしま
った。
「最後の一個、どうする裕次郎?」
「凛食べていいぜ。」
「裕次郎だって、食べたいだろー?」
「まあ、食べたいっちゃ食べたいけどー。」
「なら、半分こしようぜ。」
一つ残っているたこ焼きを半分に割ると、平古場はそれを楊枝で刺して甲斐の口へ持って
いく。
「これは裕次郎の分な。」
「ありがとー。」
平古場の差し出すたこ焼きをパクッと食べ、甲斐はもぐもぐと口を動かす。そんな甲斐の
横で、最後の一口を平古場も口に入れた。
「はあー、美味かった。」
「ホントーにな。あ、凛。」
「何?」
パクっ
「!!??」
「ホッペにたこ焼きついてたさー。」
平古場の頬についていたたこ焼きの欠片を甲斐は口で直接取る。こんな街中で恥ずかしげ
もなくそのようなことをしてくる甲斐に、平古場は真っ赤になった。
「な、何してるかよ!?」
「ホッペについてたたこ焼き取ってやっただけだぜ?」
「ふ、普通に教えてくれるか、手で取ればいいだろー!」
あわあわとしながら、怒るような口調でそう言ってくる平古場が可愛くて、甲斐はクスク
スと笑う。何故笑われているか分からず、平古場はぷーっと頬膨らませた。
「そんな可愛い顔するなし。」
「してない!!」
「あはは、とりあえず買い物しなきゃだから、店探すぜ。」
そのまま話題を変えてやらないと、本気で不機嫌モードになってしまうので、甲斐は適当
に話題を変え、平古場の少し前を歩く。何だか納得いかないなあと思いながらも、平古場
は素直に甲斐の後をついていった。
「よーし、とりあえず必要なもんは全部買ったな。」
船で使うロープや日用品を買うと、風呂敷に包んだそれを手に持ち、甲斐はそう口にする。
そんな甲斐の言葉を聞いて、平古場は甲斐に尋ねた。
「もう帰るば?」
「いや、せっかくだから他の店も見て回ろうぜ。」
せっかく街に来たのだから、ただ必要な物だけ買って終わりでは面白くない。甲斐はぐる
りと辺りを見回して、興味のそそられる店を探した。
「おっ、あそこの雑貨屋とかちょっと入ってみたくねぇ?」
「確かに。行ってみるか。」
ちょっとオシャレな雑貨屋を見つけ、二人はその店に入る。中に入ると、髪留めや腕輪な
ど、装飾品がところせましと並べられていた。
「へぇ、なかなかいい感じの店だな。」
「そーだな。おっ、この髪紐、でーじ上等やし。」
そう言いながら、平古場が手にしたのは、いつもいる海を思わせる青緑色をした髪紐であ
った。平古場の手からその髪紐をひょいっと取り上げると、甲斐はそれを店の主人に渡す。
「これ下さい。」
「えっ!?」
「まいどー。」
店の主人に代金を払うと、甲斐はその髪紐を平古場に渡す。まだ欲しいとも言っていない
し、もし欲しいと思っても自分で買うつもりだったので、平古場は驚いた様子で甲斐の顔
を見る。
「何で・・・」
「んー、その髪紐、絶対凛に似合うと思ったからさー。」
平古場が質問を最後まで言い切る前に、甲斐は答える。似合うと思ったら即買いするのか
と心の中でツッコミを入れながら、平古場は少し戸惑ったような表情を見せる。
「でも、これ結構高いし・・・やっぱり俺が自分で・・・」
「俺が勝手に買ったんだから、遠慮すんなって。凛だって、コレ、欲しいと思ってたんだ
ろ?」
「そうだけどさー・・・」
「だったら、何も気にせず受け取れって。その着物にも合うと思うし、海でも映えると思
うぜ。」
そこまで言われたならば、受け取らないわけにはいかないと、平古場は素直にその海の色
をした髪紐を受け取った。下ろしていた髪を一つに纏めるようにその髪紐で結び、平古場
は満面の笑みを浮かべ、甲斐にお礼を言った。
「ありがとーな、裕次郎。」
「やっぱ、似合うぜ。」
「じゅんになぁ?」
「ああ。すっげぇ可愛い。」
可愛いという褒め言葉はどうなのかと思いつつも、甲斐に似合うと言われ、平古場は心の
底から嬉しくなる。本当に嬉しそうに笑い、照れたように顔を赤らめている平古場を見て、
甲斐の胸はキュンキュンとときめいていた。髪紐を買って満足した二人は、その雑貨屋を
出る。雑貨屋を出た瞬間、目の前で一人の子どもが派手に転んだ。
『あっ。』
どうやらその子どもは仲良しの友達と遊んでいたところらしく、すぐ側にもう一人同じ年
の頃の子どもが慌てた様子でその子に声をかけていた。
「うわー、今のはでーじ痛いよな。」
「だなー。」
かなり痛いはずにも関わらず、転んだ子どもは必死で泣くのを堪え、友達の手を借りて起
き上がった。
「うう・・・・」
「だいじょうぶ?あっ、ひざすりむけてる。」
どうやら転んだ拍子に膝を擦りむいてしまったらしく、転んだ子どもの膝からは軽く血が
出ていた。
「いたいのいたいのとんでけー!!」
持っていた手拭いで膝の傷を拭いながら、もう一人の子どもは大きな声でそう言う。そん
な二人の子どものやりとりを、甲斐と平古場は微笑ましいなあと思いながら眺めていた。
「裕次郎。」
「おう。」
平古場が声をかけると甲斐は頷き、二人はそろってその子ども達のところへ行く。そして、
甲斐は転んだ子の頭を撫でながらこう言った。
「転んだのに泣かなかったのはエライぜ。やーは強い子さー。」
甲斐に褒められ、転んだ子どもは少し驚きながらもコクンと頷く。それと同時に、平古場
は傷の手当てをしてあげたもう一人の子どもを褒めてやった。
「やーは優しい子だな。この子は仲良しーな子なんだろ?」
「うん。」
「友達は大事にしないとだもんな。よし、そんな友達思いなやーにはこれをやるよ。」
「泣かなかった強い子にもあげるさー。」
そう言いながら、甲斐と平古場は持っていた南蛮渡来のお菓子を二人の子どもに渡す。見
たこともない綺麗で美味しそうなお菓子をもらい、二人の子どもは花が咲いたように笑顔
になった。
『ありがとう、水軍のお兄ちゃん!!』
「へっ?」
「何で俺達が水軍って知ってるば?」
名乗ってもいないのに、『水軍のお兄ちゃん』と言われ、甲斐と平古場は驚く。どうして
知っているのかを聞いたところ、比嘉水軍は強くてカッコイイと子ども達の間では、かな
りの有名人とのことであった。
「ぼく、水軍のお兄ちゃんたちみたいにつよくて、かっこよくなりたい!!」
「ぼくも!!」
キラキラとした憧れの眼差しを向けられ、二人は少し照れくさいと顔を見合わせて笑う。
しかし、照れくさいながらもそう言われて悪い気はしなかった。
「何かちょっと照れるな。」
「そーだな。でも、ちょっと嬉しいかも。」
「だな。」
お前達ならきっと強くなれるぞと、もう一度頭を撫でてあげた後、二人はその子ども達と
別れた。嬉しそうに笑いながら、大きく手を振る子ども達を見て、甲斐も平古場も何とな
く顔を緩ませる。
「やっぱ、子どもは可愛いなー。」
「子ども欲しくなったば?」
何気なくそう呟く甲斐に、平古場は冗談っぽくそう尋ねる。すると、甲斐は少し考えて、
平古場を見た。
「凛との子どもだったら欲しいけど。」
「それは無理だろー。俺、男やし。」
「だよなあ。まあ、凛と一緒にいられればどっちでもいいさー。」
そんな会話をしながら、二人は楽しげに声を上げて笑う。今日はなかなか楽しいことがい
っぱいあったと思いつつ、二人は街を後にし、海岸に向かって歩き出した。
「そういえば、凛は今日見張り当番じゃないよな?」
「ああ。そのはずだぜ。」
「それならさ・・・」
見張り当番が自分達ではないということを確認すると、甲斐は平古場の耳元で何かを囁く。
その言葉を聞いて、平古場の顔はカァっと赤くなった。しかし、赤くなりがらも平古場は
甲斐の言葉に頷いた。
「べ、別に構わないぜ。」
「なら、決まりだな。」
「永四郎には内緒にしなきゃだな。」
「それは重要さー。バレたらまたゴーヤ食わされるもんな。」
甲斐の誘いに平古場が乗った形で話が進む。どうやら総大将の木手にはバレたら困るよう
なことをしようとしているらしい。悪戯っ子のような笑みを浮かべながら、二人は楽しげ
に自分達の治める海への帰り路を辿るのであった。

                     to be continued

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