月が暗い森を照らす頃、滝は森の奥の寝床で星の瞬く夜空を眺めていた。夜になると滝は
基本的には蜘蛛モードになり、蜘蛛の糸を張り巡らせた木の間を寝床としている。
「そろそろ来る頃かな。」
ぽつりとそう呟くと、滝はふと空ではなく木の下の方へと視線を移す。その瞬間、姿は見
えないが、ふわっと良い香りが漂ってくる。しばらくして、百合モードの鳳が、その姿を
現した。鳳が自分の巣のすぐ下まで来ると、滝はすとんと木の下に下りた。
「長太郎。」
「あっ、滝さん・・・」
「今日も来てくれたんだ。」
「はい。」
ニッコリと笑って鳳を迎える滝だが、その微笑みの奥には、蜘蛛らしい残忍な妖しさが含
まれていた。それを分かっているかのように、鳳はドキドキと胸を高鳴らせ、甘く強い芳
香を放っている。
「さてと、今日はどうする長太郎?」
「えっ・・・?」
「こんな夜遅くに俺を尋ねて来て、何もなしで帰れるとは思ってないよね?」
「そ、それは・・・・」
「長太郎は、分かってて俺のところに来てるんだよね。」
心の中を見透かされているようで、鳳は何も言えず、頬を赤く染めながらただ滝の顔を見
る。その視線がたまらず、滝はふっと口元を緩ませた。
「蜘蛛モードの俺は、蝶モードの俺とは違って気性が激しいよ。帰るなら、今のうち。」
「どっちのモードだろうと、滝さんは滝さんですから。」
「ふふ、そっか。それじゃ・・・・」
そこまでの覚悟があるなら問題ないと、滝はしゅるっと指の先から蜘蛛の糸を出し、鳳の
体を寝床である蜘蛛の巣にはりつける。身動きが全く取れなくなってしまったことに、多
少の不安を感じながらも、鳳は淡い期待感を胸に抱いていた。
「蜘蛛らしいやり方で、長太郎のこと食べちゃうけど、それでもいいの?」
「はい・・・構いません。」
「そういう潔いとこ、すごく好きだよ。安心して。絶対痛くはしないから。」
「別に少しくらい痛くても平気です。だって、俺、滝さんに食べられに来てるんですから。」
「へぇ、じゃあ、ゆっくりじっくり味わわせてもらうよ、長太郎。」
どちらもそんなことは分かりきっているが、これからすることの気分をより盛り上げるた
めにそんな会話を交わす。蜘蛛の糸で磔にされた鳳の口にそっと口づけると、滝はその口
を鳳の首元へ持って行く。そして、蜘蛛モードになると生える鋭い牙を甘い香りのする皮
膚に突き立てた。
柔らかい皮膚に滝の牙が刺さると、鳳は小さな呻き声を上げる。蜘蛛モードの滝の牙には、
微量の毒が含まれている。しかし、それは花族には毒としての効果は全くなく、むしろ、
媚薬のような効果が表れるものとなっている。
「んっ・・・」
滝の口から離れると、鳳は指の先から身体の中心までがほのかに痺れてくるのを感じる。
じわじわと体中を巡る蜘蛛の毒は、鳳の感覚器官を滝の都合に見合うように変えていった。
「服は邪魔だから脱がせちゃうよ。」
これからすることに、服はいらないと、滝は鳳の身につけているものを全て剥ぎ取ってし
まう。全てが夜の冷たい空気に晒され、鳳は羞恥心とほんの少しの寒さから小さく身を震
わせた。
「寒い?長太郎。」
「少し・・・」
「それなら・・・・」
鳳が寒がっているのを見て、滝はしゅるっと糸を出し、適当に鳳の体に巻きつけた。蜘蛛
の巣に裸で磔られているのもかなりやらしい感じだが、至るところに糸を巻きつけられ、
縛られているような状態になっている鳳は、言葉では表せないような色香を放っていた。
「可愛いよ、長太郎。どこもかしこも美味しそうだし。」
自分好みの鳳を前にし、滝は楽しげに笑いながら、鳳の身体に口づけていく。滝の毒で感
覚が敏感になっている鳳は、滝の唇がその身に触れるたびに高い声を上げる。
「んっ・・・あ・・んっ・・・・」
「ココとかも食べやすそうな感じになってるし。」
ぷっくりと立ち上がったピンク色の突起を滝はパクっと口に含む。コロコロと舌で転がし、
小さく甘噛みすると、鳳は過敏に反応する。
「やっ・・・ふあっ・・・ん・・・!」
「すごくイイ匂い。気持ちよくなってる時の長太郎の匂い、俺、大好きだよ。」
「あんっ・・・滝さん・・・そこ・・・やあっ・・・!」
「じゃあ、コッチ?」
今まで口含んでいた方とは違う側の突起に滝は口づけ、唇で食む。先程までは柔らかさが
勝っていたその突起は弄られるたびに固くなってゆく。
「ひあっ・・・も・・そこばっか・・・・やめてくださ・・・い・・・」
「何で?気持ちイイでしょ?」
「むずむずして・・・変な感じで・・・・切ないですよぉ・・・・」
「ふーん、そっか。それじゃ、そろそろたっぷり蜜をもらおうかな。」
胸の突起は何かが出るというわけではないので、弄っていたところで蜜を得ることは出来
ない。そろそろ鳳の甘い蜜を口にしたいと、滝はしゅるりと鳳の足首に糸を絡め、足を開
かせるような状態で固定した。
「すごいね。もう蜜がこんなに溢れてる。」
「だ、だって・・・・」
「俺にたくさんキスされて、気持ちよかったんだよね?だから、こんなになってるんでし
ょ?」
「・・・・はい。」
素直に頷く鳳に、滝は嬉しそうな顔になる。これはもっと気持ちよくさせてあげないとと
いう心持ちで、滝はじわじわと蜜を溢れさせている茎に、そっと口づけた。
「あっ・・・!」
「美味しい。」
少し舐めただけでも、ほんのり甘い甜蜜のような味が口の中に広がる。もっとそれを味わ
いたいと、滝はペロペロと茎を舐め、時折口の中に含んで、ちゅっと吸ってみたりする。
刺激を与えれば与えるほど、その先端からは蜜が溢れ、滝の味覚と嗅覚を刺激した。
「ん・・あっ・・・あぁん・・・・」
「ねぇ、もっと濃い蜜が飲みたいな、長太郎。」
「えっ・・・でも・・・・」
「飲ませて、長太郎。」
ぱくっと先端だけを咥え、口に含まれていない部分を滝は器用に指で擦る。そんな刺激は、
あっという間に鳳を絶頂という高みまで昇らせた。
「ああっ・・・ああ――っ!!」
その瞬間、滝の口の中に一際濃い白い蜜が放たれる。その味は、一瞬にして滝の心を捉え、
麻薬のようにもっと欲しいという欲求を掻き立てる。
「やっぱ、長太郎の蜜は最高だね。こんなに美味しいもの、他にないよ。」
「ハァ・・・そんなこと・・・・」
「そんなことあるって。この蜜も最高だけど、こっちの蜜もなかなかの味だよね。」
そんなことを呟きながら、滝は開かれた足の中心にある小さな蕾に触れる。敏感な蕾の入
口に触れられ、鳳はピクンと身を震わせた。
「ふあっ・・・滝さんっ・・・そこはっ・・・・」
「ココにも、蜜がたっくさんつまってるんでしょ?」
ふるふると鳳は首を横に振るが、少し触れられただけでも、その蕾はじんわりと透明な蜜
を滲ませていた。こっちの方の蜜も存分に味わいたいと、滝はまだ閉じたままでいる蕾に
口をつける。そして、ちゅうっと一度軽く吸ってやった。
「ひああっ・・・!!」
直接的な蕾への刺激に鳳は身を震わせ、その腰を引こうとする。しかし、蜘蛛の糸でしっ
かりと体が固定されてしまっているために、滝の口から逃れることは出来ない。何度かそ
の蕾を吸われたり舐められたりしていると、その蕾はたくさんの蜜を滲ませ、きゅうきゅ
うと収縮を繰り返し始めた。
「こっちの蜜の味はまた違った感じでいいね。」
「そんなとこ・・・ダメですよぉ・・・・」
「どうして?こんなに美味しい蜜をたくさん出してくれてるのに。」
「だって、そんなとこ・・・吸われたり舐められたりしたら・・・・」
「したら?」
「・・・・気持ちよくて、またさっきみたいに・・・イッちゃいます・・・・」
恥ずかしそうにそんなことを口にする鳳の可愛さに、キュンキュンしながら滝は先程の続
きを繰り返す。弄れば弄るほど、その蕾は柔らかくなり、溢れる蜜でトロトロになってい
った。
「んあっ・・・やぁんっ・・・・」
蜜が溢れているそこは少し指で横に広げてやれば、簡単に隙間が出来る。そんなふうにし
て出来た隙間から、滝は舌を差し入れ、濃いピンク色の壁を舐めながら直接甘い蜜を味わ
った。あまりに直接的な刺激に、鳳はがくがくと下肢を震わせる。
「やあっ・・・中、ダメです・・・あっ・・・はぁ・・・」
「中、すごくトロトロだよ。長太郎の体は、本当エッチだね。」
「ひあ・・・違っ・・・あぁんっ!!」
少し喋っては口をつけ、滝は鳳の中を存分に探り、その熱さと甘さに魅せられる。内側を
舐められるという刺激をかなり長い時間与えられ、鳳は熱を持った茎の先からも何度か濃
い蜜を放った。
「ハァ・・・あっ・・・あぁ・・・」
「よし、もう充分蜜は味わったし、今度は長太郎が養分を取る番だね。」
「えっ・・・?」
「長太郎は花族だから、こっちから水分を含んだものを得ても、栄養になるんでしょ?」
「そうですけど・・・」
「なら、俺がココにたくさん栄養注いであげる。」
ニコッと笑うと、滝はギリギリまで高まった楔を蜜を溢している蕾に押し当てる。そして、
そのまま鳳の腰捉え、ぐっと身を進めた。
「んあっ・・・ああっ・・・!!」
「ふふ、長太郎の中、蜜でトロトロなのに、いい感じで俺のを締め付けてくれるね。」
「滝さんの・・・熱い・・・・」
「だって、長太郎すごく可愛いから。あんなに可愛い顔ずっと見せられてたら、こうなっ
ちゃうよ。」
そんなことを言いながら、滝は鳳の中を抉るように腰を動かす。大きな熱の塊で敏感な内
壁を擦られ、鳳はビクンと体を跳ねさせ、一際強く滝の熱を締め付けた。その感覚がたま
らないと、滝は何度もその行為を繰り返す。
「あっ・・・はぁ・・んっ・・・・そんなに・・・動かれたら・・・・ああっ・・・!」
「また、イッちゃうって?長太郎、本当に感じやすいよね。」
「ひぅ・・んっ・・・だ、だって・・・滝さんに触られると・・・俺っ・・・・」
「それじゃ、そんなに簡単にイケないようにしてあげる。その方が、長い間、一番気持ち
イイ状態が続くしね。」
ニヤリと笑い、滝は指の先から出る糸で鳳の茎を縛ってしまう。敏感な部分に糸の締め付
けが加わり、鳳は余計に感じてしまう。
「ひっ・・・糸・・・やぁ・・・・!」
「こんなのでも感じちゃうんだ。だったら、もっといいコトしてあげる。」
鳳の反応が可愛いと、滝はもっと激しいことをしてやろうと妖しげな笑みを浮かべる。そ
して、しゅるると指の先から糸を出した。それぞれの指に繋がる糸は自然に絡み合い、少
し太い糸を織り成す。その太い糸を滝は鳳の茎の先端に垂らした。
「知ってる?長太郎。蜘蛛はね、糸の種類や太さを自由に変えられるんだよ?」
「な、何するんですか・・・?」
「長太郎のココに、これを入れるんだよ。」
「やっ・・・嫌・・・そんなの・・・・」
「大丈夫。初めがちょっと痛いだけだから。後はもう気持ちよくてたまらなくなるよ。」
どんなに嫌がろうとも、磔にされた状態では逃げられない。滝の指に繋がった糸は、鳳の
茎の小さな穴にしゅるしゅると入り込んでゆく。普通ならば何かが入り込むことがない部
分に糸を入れられ、鳳は悲鳴にも似た声を上げる。
「ひあっ・・・いっ・・・ああぁ――っ!!」
「くっ・・・すごい締まる・・・。そんなにいいの?長太郎。」
「やあっ・・・あっ・・・抜いてっ・・・抜いて下さいっ・・・!」
「そんなに抜いて欲しい?」
「は・・い・・・滝さんっ・・・あっ・・・」
抜いて欲しいと懇願する鳳を見て、滝は余計に虐めたくなってしまう。奥まで入れた糸を
出口ギリギリまで抜くが、外に出る直前で再び勢いよくその中へ埋め込んだ。
「ひぁ・・んっ・・・・やあぁ――っ!!」
「っ!!」
抜いてもらえると思った矢先にもう一度奥まで入れられ、鳳はぎゅうぎゅうと滝のものを
締め付ける。まさかそこまで強く締め付けられるとは思っていなかったので、滝はその刺
激を受け、鳳の中へ熱い飛沫を放ってしまう。
「あっ・・・あ・・・熱っ・・・・」
「長太郎があまりにもいい感じに締め付けてくれるから、俺の方が先にイッちゃった。」
「滝さ・・・ん・・・俺も・・・・イキた・・・ぃ・・・です・・・」
「長太郎はまだダメ。もう少し楽しませて?」
まだもう少し足りないと、滝は再び鳳の中を擦るような動きと、茎の中に入れた糸を動か
すことを同時にし始める。前と後ろを内側から責められ、鳳は気を失ってしまいそうな程
の快感の波に呑み込まれる。ギリギリまで高まっている茎が糸によって縛られているため、
中にある蜜を放つことは出来ないが、鳳は激しい快感に耐えきれず何度も絶頂を迎えてい
た。しかし、それを終わらせるための蜜が放出されないため、限界ギリギリの気持ちよさ
が延々と続く。
「ああっ・・・ひあっ・・・あぁんっ!!」
「ふふふ、何かもう達きっぱなしって感じだね。」
「ああっ・・・滝さ・・・ひぅ・・・ああぁ――っ!!」
「可愛い長太郎。ずっとこのまま見ていたいくらいだよ。」
「ハァ・・あっ・・・滝さんっ・・・も・・・苦し・・・ですよぉ・・・・」
ぶるぶると身を震わせ、苦しげに喘ぎながら鳳はそんな言葉を紡ぐ。さすがにそろそろ出
させてあげないと可哀想かと、滝は茎に巻いていた糸を解き、中に入れていた糸を抜き取
った。その解放感に、鳳は今までにないくらい大きな絶頂感を感じる。
「ひああっ・・・あああぁぁ―――っ!!」
今まで以上に大量に放たれた蜜を滝は自分の指に絡め、口へと運ぶ。その甘い蜜は、滝の
心を鷲掴みにし、全身が痺れるような大きな快楽をもたらす。
「長太郎、もう少し、ね?」
「あっ・・・あぅ・・・ああ・・・」
「今度は一緒に達こう。二人で、一緒に・・・」
「は・・い・・・・滝・・さ・・ん・・・・」
果てしない快楽を求め、二人は口づけを交わし、再び甘い快感の中に堕ちてゆく。むせか
えりそうなくらいの百合の香りを辺りに漂わせ、蜘蛛の糸に捕らえられた二人は、その体
が満たされるまで、何度も蜜の交換をし合うのであった。
十分に夜の食事を終えた二人は、柔らかい蜘蛛の糸のベッドで横になっていた。滝はいま
だに蜘蛛モードのままだが、先程までの激しい情事を終え、気分が落ち着いてきた鳳はス
ミレモードになっていた。
「疲れたよね、長太郎。無理させちゃってゴメンね。」
「い、いえ・・・全然平気ですから。」
「蜘蛛モードだと、ついつい歯止めが利かなくなっちゃうんだよねー。」
「でも、俺・・・滝さんにあーいうことされるの好きですよ。」
恥ずかしそうに顔を赤らめながら、鳳はそんなことを呟いた。その言葉と態度が本当に可
愛らしいと、滝の胸はドキドキと高鳴る。
「そんなこと言われたら、俺、調子に乗っちゃうよ?」
「だって本当のことですもん。されたくなかったら、わざわざこんな時間に滝さんのとこ
ろへ来ないですよ。」
「まあ・・・確かにそうだね。」
「俺、蝶モードの滝さんも綺麗ですごく好きなんですけど、蜘蛛モードの滝さんも大好き
なんです。昼間とはちょっと違う雰囲気が魅力的で。」
「ちょ、長太郎・・・・」
あからさまにそんなことを言われるのは、なかなか恥ずかしいと、滝は顔を真っ赤にする。
照れている滝を見て、鳳はくすくす笑った。
「滝さん、顔真っ赤です。」
「長太郎が、嬉しいことばっか言ってくるからだよ。」
「滝さんだって、いつも俺が喜ぶようなこと言ってくれるじゃないですか。」
「そうだっけ?」
「はい。花族は可愛いとか綺麗とか言われるのがすごく嬉しいんですよ。あと、これは花
族というよりは、俺個人の話ですけど・・・滝さんに好きだって言われるのは、とっても
嬉しいです。」
ニッコリと笑いながらそんなことを言う鳳に、滝は胸をときめかせる。もう本当に嬉しい
ことばっかり言ってくれると、滝は思わず鳳の体をぎゅうっと抱き締めた。
「本当長太郎可愛いよ。もう大好きvv」
「た、滝さん。」
「今夜はもう離さないよ。このまま一緒に寝るんだからね!」
「大歓迎ですよ。言われなくてもそうするつもりでしたし。」
「じゃあ、糸で手結んじゃおうか。離れないように。」
「そんなことしなくても離れないとは思いますけど・・・それも悪くないですね。」
冗談めいた口調で二人はそんな会話を交わす。悪くないならそうしてみようと、滝は自分
の手首と鳳の手首をしっかりと糸で結んだ。
「これなら絶対離れないですね。」
「うん。それじゃそろそろ寝ようか。一緒にね。」
「はい!」
二人で一緒に居られることを嬉しく思いながら、滝と鳳は眠りにつく。森の中の寝床には、
穏やかな花の香りがふんわりと心地よく漂っているのであった。
to be continued