Happiness of Christmas 3

二人だけのクリスマス・パーティーを終えた跡部と宍戸はそれぞれシャワーを浴び終え、
寝室でくつろぐ。さっき跡部が持ってきたバラの花束の半分くらいはこの部屋に飾ること
にした。
「このバラ結構いい匂いだな。」
「意外と香りの強い種だったみたいだな。紫のでここまで匂いがするのも珍しい。」
「へぇ、そうなんだ。でもさ、何でこの色なんだ?バラって白とか黄色とかもあるよな?」
「お前の好きな色だろ、どっちも。それに黄色のバラは花言葉が好きじゃねぇ。」
「何?黄色のバラの花言葉って。」
「嫉妬と失恋。」
「確かにプレゼントには向かない花言葉だな。」
花瓶に花を挿しながら宍戸は笑う。本当によくそんなことまで知っているなあと感心し、
そして、この色を選んでくれた理由が嬉しくて自然と顔が緩んでしまうのだ。キングサイ
ズのベッドのすぐ横に二つの色のバラを飾り終えると、宍戸は布団の上で本を読んでいる
跡部の隣に腰掛けた。
「その本おもしろいのか?」
「ドイツ語で書かれてるからな。お前はちょっと読めないかも。」
「そっか。」
何だつまんないのというような表情で宍戸は足を抱えて、ちょうど体育座りのような体勢
になる。
「そんなに拗ねるなよ。これ、ゲーテの詩集なんだけどよ結構おもしろいぜ。これとか俺
としてはかなりお気に入りだな。」
付箋が貼ってあるページを開き、宍戸に見せる。だが、そこにはアルファベットがたくさ
んそれも英語とは違う形で並んでいるだけで宍戸には全く理解出来ない。
「見せられても分かんねぇよ。」
むぅっとした表情で宍戸は跡部を睨む。そんなに怒るなよと跡部はその本を見せたまま、
開かれたページの和訳を宍戸の耳元で囁いてやる。
「『私たちはどこから生まれてきたか。 愛から。 私たちはどうして滅ぶか。 愛なき
ために。 私たちは何よって自分に打ちかつか。 愛によって。 私たちも愛をみだし得
るか。 愛によって。 長いあいだ泣かずに済むのは何によるか。 愛による。 私たち
をたえず結びつけるのは何か。 愛である。』」
何て詩だと思いながらも宍戸の顔を真っ赤。あの低いトーンの声でそんな詩を囁かれたら
こうなってしまうのは当然であろう。
「何か・・・すげぇ詩だな。」
「俺は好きだぜ、こういうの。昔の詩人もこう言ってんだ。俺達も愛を確かめ合おうぜ。」
「わっ・・・!!」
トサっとベッドの上に宍戸を押し倒す。これに繋げたかったんじゃにのかと宍戸は少し疑
いながらも、今日はクリスマス・イブ。別に嫌ではないので特に抵抗もしないで、跡部の
好きなようにさせることにした。
「お前、単にこれがしたかっただけだろ?」
「そんなことないぜ。お前が俺が読んでる本の内容を知りたがってたみてぇだったからよ。」
「確かにそうだけどさぁ。まあ、いいや。どっちにしてもやるつもりだったんだろ?だっ
たら、さっさと始めようぜ。」
実を言うと宍戸も跡部としたくてしょうがなかったりする。ちょっとだけ恥ずかしさを顔
に出しながら、率直に跡部を誘う宍戸はかなり可愛い。そんな宍戸を組み敷いている跡部
の理性はもうほとんどないに等しかった。少々乱暴に唇を奪い舌を絡めると、跡部は愛を
確かめ合うという名目でいつものあの行為を何の躊躇もなしにし始めた。

今日はしつこいほどに跡部は宍戸にキスばかりしている。深い深いキスを何度も何度も繰
り返され宍戸はかなり息があがっていた。
「ハァ・・・景吾・・・んんっ・・・・」
頭の中がくらくらしてくるような熱く甘い口づけに酔わされる。それは、アルコールを飲
んだ時の感覚にも似ているが、それよりももっと気持ちがよく、体が熱くなるものだ。唇
を重ねたままの状態で跡部は器用に服を脱がし、指を露わになった肌に指を這わせる。
「んっ・・・ハァ・・・あっ・・・・」
銀色の糸が二人の口を繋げる。それは離れていくことの名残惜しさを表しているようだ。
「お前のこともっとキレイにしてやる。」
そう言って跡部はおもむろに立ち上がる。そして、ベッドの横に飾られたバラに手を伸ば
した。赤と紫それぞれ二本ずつを手にすると、花びらをバラバラにし、宍戸の横たわって
いる身体にそれを散らせる。
「何・・・してんだよ?」
「すげぇキレイだぜ亮。お前自体がバラみてぇ。」
「ひゃっ・・・やっだ・・・そこ・・・やめっ・・・」
花びらの合間からのぞく小さな突起を口に含むと、宍戸はビクっと身を震わせる。口の中
でだんだんと立ち上がってくるので自然と歯に引っかかる。カリっと軽く噛んでやると宍
戸はさらに素直な反応を跡部に見せた。
「あっ・・・景吾・・・・んっ・・あぁ・・・」
「ここ、この花びらと同じ色になってるぜ。赤くてうまそうで思わず食べたくなっちまう。」
「そ・・んな・・・・やだぁ・・・・」
「お前、ここ感じやすいよな?ちょっと触るだけで身体全体で反応するもんな。」
跡部がそこに舌を這わせ、上目使いで尋ねてくるので、宍戸は恥ずかしくて思わず目をつ
ぶる。だが、目を閉じることで感覚がさらに研ぎ澄まされ、余計に跡部のすることに対し
て感じてしまう。
「あっ・・・あぁ・・・あっ・・・」
「最高だな。お前の身体。感じやすくて、すぐに俺のすることに応えてくれて、抱き心地
も抜群。その上、俺のすること一切拒まないもんな。」
「拒んで・・欲しいのかよ・・・?」
「バーカ。誰もそんなこと言ってねぇだろ。それにお前が頭で拒みたいって思ったって、
お前の体はもう拒めねぇようになってんだよ。」
「んだよそれ・・・ふっ・・・あっ・・・景吾・・何でさっきからそこばっかっ・・・」
「今日は何か飽きねぇんだよな。」
小刻みに震える宍戸の様子をうかがいながら、跡部はさっきから胸の突起ばかりを弄って
いる。切なくなるようなその感覚に耐えられなくなり、宍戸は涙声で跡部にやめて欲しい
と頼む。だが、ただやめろと言って跡部がやめるはずがない。
「景吾・・・も・・・そこやめろ・・・・」
「何で?こんなになってんだから、よくねぇってことはないだろ?」
「・・・・もっと・・・他のところもしてくれよ・・・・」
目を潤ませながらこんなことを言われてしまっては、他の部分もやらないわけにはいかな
い。誘い受度全開の宍戸を前にして、跡部は動揺せざるをえなくなった。
「ホント、お前にはかなわねぇよ。」
そう言うと、ズボンを下着ごと脱がせてしまい無理やり足を広げさせた。さっきの行為の
所為で宍戸の熱はもう既に勃ち上がっている。
「ヤダ・・・こんなかっこ・・・・」
「こっちもこんなに素直に反応しちゃって、お前やっぱ淫乱だよなぁ?」
「見るなっ・・・」
跡部が意地悪く笑いながらこんなことをいうので、宍戸は恥ずかしくてしょうがなかった。
跡部とやればこんなことを言われるのは百も承知だ。だが、いまだに慣れない。いつまで
もそんな純粋乙女な反応があるからこそ、跡部はわざとこういうことを言ってしまうのだ。
宍戸は足を閉じようとするが、跡部がしっかりと手で押さえてしまっているので、思うよ
うにはいかない。そのうえ、何を考えているのか跡部は前に触れないで、いきなり後ろを
慣らし始めた。
「うっ・・あっ・・・・なっ!?いきなりっ・・・」
「ふーん。結構すんなりいけるじゃねぇか。そうだ、今日はクリスマスだからな。うんと
サービスしてやるぜ。」
「やっ・・・うそっ・・・ダメっ・・・景吾・・・ひゃっ・・あ・・!!」
跡部は開かれた足の間に顔を埋めて、指で慣らしているそこに舌を這わせる。指だけでも
十分感じているのに、そこに濡れた舌が触れる。その何とも言えない感覚に宍戸は首を振
ってやめてくれと懇願した。
「うあっ・・・やめろっ・・・景・・吾・・・・そんなとこ・・・汚いっ・・・・」
「そんなことねぇだろ。さっき俺様がちゃーんと洗ってやったんだぜ。キレイだぜ、お前
の花びら。」
「はぁ・・ん・・・しゃべるなぁ・・・・」
「すげぇ濡れてきてる。もう一本くらい入りそうだぜ?」
「っ!!・・・あっ・・・ぅ・・・痛っ・・・」
指を一本増やされ宍戸は苦しそうな声を上げる。だが、跡部にとってはそんな声も自分を
気分を高める要因の一つでしかない。初めは苦しそうな声もしばらくすると甘い喘ぎ声に
変わる。それが分かっているからこそ、跡部はこの行為を心から楽しめるのだ。
「も・・・変になる・・・ハァ・・・あっ・・・ん・・・・」
「やめて欲しいか?」
「やだ・・・だったら・・・・」
「何だよ?」
ハァ、ハァと胸を上下させ、宍戸は躊躇いがちに小さい声で跡部に言う。
「早く・・・挿れてくれよ・・・」
「ふっ、もう我慢出来ねぇんだな。じゃあ、もう一回ハッキリ言え。」
「挿れて・・・景吾・・・・」
やはりそういうことを言うのが恥ずかしいのか宍戸は顔の上で腕クロスするようにして顔
を隠す。跡部は濡れた口を軽く拭うと自分のズボンに手をかけ、軽く宍戸の首すじにキス
をすると自らを宍戸の中にゆっくりと挿入してゆく。
「あっ・・・あっ・・・はっ・・ぁ・・・・っ!!」
「もう少しいけそうだな。」
「うあっ・・・あっ・・・ああ!!」
接合部から濡れた音が響く。自分の中いっぱいに跡部が埋め込まれると宍戸は震える手で
跡部の背中を掴むようにしてしがみついた。まだ、キツイのか口から漏れる吐息は途切れ
途切れで苦しそうだ。
「くっ・・・ふ・・ぅ・・・・」
「亮、まだ動くの無理そうか?」
「ううん・・・多分・・平・・気・・・・」
「じゃあ、動くぜ。」
「んっ・・・あっ・・・・あぁ・・んんっ・・・」
ゆっくり跡部が動き出すと宍戸は首を仰け反らせ、一際高い声を漏らす。その瞬間、締め
つけるような衝撃が跡部の下腹部に走った。
「くっ・・・。」
「景吾っ・・・あっ・・・やっ・・ん・・・」
「すげぇ、メチャクチャ絡みついてくる。」
思った以上に宍戸が自分のモノを飲み込んでくれているので、跡部は余裕がなくなってし
まった。柔らかく潤いを帯びている宍戸の中はどんな場所よりも気持ちがいい。そんなこ
とを考えながら跡部は宍戸に深く口づける。
「ふっ・・・ぅ・・・」
「最高だぜ、亮。」
「景吾・・・俺・・・・今日・・・お前に気持ちよくしてもらって・・・ばっかだ・・・」
「そうだな。俺がそういうつもりでやってんだから当たり前だろ?」
「俺・・・景吾に・・・・何にもしてやれてねぇよ・・・・」
涙声でそう言う宍戸は自分ばかり跡部からいろんなことをしてもらって、自分が何もして
やれないことが悔しいらしい。だが、本当にそうであろうか。当然のことながら跡部はそ
んなふうには思っちゃいない。
「何もしてやれてねぇだ?何言ってんだバーカ。そんな顔見せて、イイ声泣いて、今だっ
て俺のを痛いくらいに締めつけてる。それで何もしてやれてねぇはねぇだろ。お前も俺の
こと最高に気持ちよくさせてくれてるぜ。」
「本当か・・・?」
「ああ。俺様の言うことが信じられないのか?」
宍戸は首を振って否定する。分かったんならいいと跡部は止めていた動きを再開する。
「あっ・・ぅん・・・はぁっ・・・あっ・・・」
「亮、今日は最高のクリスマス・イブだぜ。こんなクリスマスはお前とじゃねぇと絶対に
ありえねぇ。」
「ハァ・・・う・・んん・・・・」
「愛してるぜ、亮。」
そう囁かれた瞬間、宍戸の頭は真っ白になった。もう跡部以外何もいらない。そんな思い
が心の中を埋め尽くす。跡部と同じように今日は最高のクリスマス・イブだと感じながら
宍戸は果てた。それに少し遅れて跡部も宍戸の中にたくさんの愛を放つ。乱れた息の中で
その余韻を味わうかのように二人はもう一度深い口づけを交わした。

事後処理をしないとということで、跡部は宍戸をバスルームへと運ぶ。もちろん宍戸は意
識はあるのだが、ここはあえて王子様にお姫様が抱かれるような感じで運んでもらうこと
にした。
「サンキュ、景吾。」
「ああ。じゃあ、やるけどいいよな。」
「お、おう・・・。」
優しく下に下ろすと跡部はさっき自分が宍戸の中に放ったものを掻き出すべく、宍戸のそ
こに指を這わせる。その瞬間、宍戸の体が一瞬ビクッと震えた。
「ちょっ・・・たんま、景吾!!」
「何がだよ?ちゃんと出さないと気持ち悪ぃだろうが。」
「違っ・・・うっ・・・ん・・・!」
宍戸の話など全く聞かず跡部はまだ落ち着いていないそこに指を入れ、中のものを掻き出
した。
「ぁ・・・ん・・・ぅ・・・・」
宍戸は跡部にしがみついて小刻みに震える。さっきの今で、まだそこが相当敏感になった
ままなのだ。なので、こんな行為にもメチャクチャ感じてしまっている。だが、跡部はそ
んなことには全く気づいてはいない。
「・・・ふっ・・・ぅ・・・・」
「後もう少しだな。」
「・・・・っ!・・・あっ!!」
跡部が指を抜いたと同時に宍戸は達してしまった。意外なことに跡部しばし唖然。宍戸は
へなへなとその場に座りこんで、顔を覆う。
「お前、この程度のことだけでイクか?普通。」
「〜〜〜〜〜。」
宍戸、恥ずかしすぎて言葉も出ない。からかうような笑みを跡部が浮かべているので尚更
だ。
「まあ、さっきの余韻がまだ残ってんだからしょうがねぇよな。ほら、いつまでそんなこ
としてんだよ。ベッドに戻んぞ。」
「わっ!?」
シャワーで軽く体を流した後、さっきと同じように跡部は再び宍戸を抱き上げ寝室へと向
かった。もちろん素っ裸ではダメなのでどちらもバスローブを着てからだ。
「ふぅ〜、疲れたー。」
「今日も結構激しかったからな。茶でも入れるか?」
「あ、うん。ちょっと喉痛ぇし。」
「あんだけ喘いでたんだ。声枯れたっておかしくねぇよ。」
「またお前はそういうこと言う〜。あっ、茶俺が淹れた方がいいよな?」
「お前、まだまともに立てねぇだろ。そこに座ってろ。今日は特別に俺様が入れてやる。」
部屋にあるティーポットで、紅茶を入れる。それをベッドまで運ぶと片方のティーカップ
を宍戸に渡した。
「サンキュー。」
「熱いから気をつけろよ。」
「おう。」
淹れたての紅茶を冷ましながらすする。優しい温かさが胃に広がり、体全体が休まるよう
な心地がした。
「なあ、景吾。」
「何だ?」
「さっきさ、俺のこと『愛してる』って言ってくれたろ?あれの返事してないなあと思っ
てさ・・・。」
「あれは別に返事が欲しくて言ったんじゃねぇよ。俺の正直な気持ちだ。」
「また、俺お前からもらってばっかになっちまうじゃねぇか。」
俺ばっかりもらうのは嫌だと宍戸は不機嫌そうな顔をする。ホントにどこまでも可愛い奴
だと跡部はふっと笑った。
「じゃあ、お前が満足するようなことすればいいじゃねぇか。俺は別に拒まないぜ。」
そう言われて宍戸は、少し考えた後、跡部の足を跨ぐような形で座って何度も唇にキスを
する。そして、ぎゅっと抱きつきながら好きだという言葉を繰り返した。
「満足か?」
「一応な。でも、まだちょっと足りない。なあ、景吾どうすればいい?」
「どうすればいいって言われてもなあ。もう俺はお前から十分すぎるほど今日はいろんな
もんもらったし。ホントこれでおあいこでいいと思うぜ。」
「そうか?うーん、景吾がそういうならまあいいや。」
一応は宍戸も満足するくらい跡部に何かをあげられたらしい。もうそろそろ眠ろうかとい
うことになり、二人は布団にもぐった。その瞬間、どこからともなくバラの香りが漂う。
「うわ、何かすげぇバラの匂いがする。」
「さっきそのへんにばらまきまくったからな。お前の体からもするぜ。バラの匂い。」
「マジで!?・・・うわあ、本当だ。」
自分の体の匂いを嗅ぐと確かにバラの匂いがする。宍戸は驚くような顔をするが、嫌では
ないようだ。
「まあ、いっか。そんなに嫌な匂いじゃねぇし。景吾は大丈夫か?この匂い。」
「ああ。いい匂いだと思うぜ。お前の匂いと混ざってさらにいい感じになってやがる。」
首すじに鼻を近づけて跡部は宍戸から香る匂いを楽しんだ。あまりにも近くにある跡部の
顔にドキドキしながらも宍戸は嬉しいなあと感じる。
「なあ、景吾。明日休みだろ?岳人とか長太郎とか樺地も休みだよな?」
「ああ。それがどうかしたか?」
「俺、みんなでクリスマス・パーティーやりてぇ。やろうぜ。」
「まあ、悪くねぇ話だな。いいぜ。思いっきり豪華なクリスマス・パーティーにしてやろ
うぜ。」
「よっしゃあ。明日のクリスマスも楽しみだ。な、景吾。」
「そうだな。」
今日の宍戸はずっと上機嫌だ。おそらく明日もこんな感じのテンションなのであろう。そ
んな宍戸を見て跡部も嬉しそうに微笑む。あと数分でクリスマス。聖なる夜はまだまだた
くさんの幸せの雪を降らせてくれるのであろう。

                                END.
               滝鳳へ     岳忍へ

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