それぞれのChristmas★
(Atobe&Shishido)

ベッドの上に移動した二人は、まずは身につけている服を全て脱いでしまう。薄暗さの中
で裸になってゆく相手の姿を見るのはどちらにとってもひどく興奮することであった。
「今日は随分躊躇わずに脱いでってんな。」
「別にそんなことねぇと思うけど・・・」
「風呂でも思ったが、お前本当にいい体つきしてるよな。」
「そうか?」
「ああ。すげぇ俺好みの体つきだぜ。」
ベッドの上にペタンと座る宍戸の体を跡部はまじまじと眺める。ベッドの上で見る裸は、
風呂場で見るのとはまた違うよさがある。そんなことを考えながら、跡部は宍戸の顔に手
を触れ、唇を押しつけるだけのキスをした。
「跡部?」
いつもなら初めから激しいキスをかましてくる跡部が、今回は何故か控えめだ。どうした
んだろうと疑問に思いながら、宍戸は跡部の名前を呼ぶ。
「なあ、二つ目のクリスマスプレゼントよ。」
「ああ。」
「俺ってのはどうよ?すげぇ豪華なプレゼントだと思うぜ。」
「そういうセリフは普通俺の立場の奴が言うんじゃねぇの?」
「もちろんテメェが俺を好きにするって意味じゃねぇぜ。まあ、それもありかもしれねぇ
けど。さっき、テメェは俺が喜ぶこと何でもしてやるって言ってたろ?」
「あー、まあな。」
「俺もテメェが悦ぶこと何でもしてやるよ。それが二つ目のクリスマスプレゼントだ。」
思ってみない跡部の言葉に宍戸はしばし唖然。しかし、それはそれで悪くはない。クリス
マスだし、少しくらいはっちゃけてもよいかなあと宍戸は自制心のたがを緩める。要する
に自分も跡部も満足出来るようなことがたくさん出来ればいいのだ。
(うーん、そうするにはどうすればいいんだろう?俺も跡部もイイ感じになれるといいん
だけどなあ・・・)
「おい、宍戸。聞いてるか?」
「あ、ああ。ちゃんと聞いてるぜ!ちなみにさ、跡部は俺がどうすると嬉しいと思うんだ
よ?」
「あーん?そうだな・・・素直にイイとか、こうして欲しいとか言ってくれたらそりゃ嬉
しいと思うぜ。」
「なるほどな。でも、そういうことってなかなか恥ずかしくて言えねぇんだよ。」
「だから、言ってもらえりゃ嬉しいんじゃねぇか。テメェはどうなんだよ?どうされるの
が一番いいんだ?」
「俺?俺は・・・そうだなぁ・・・いつも嫌だみたいなこと言っちまうけど、跡部がして
くれることは何でも基本的に好きだぜ。でも、しいて言うなら俺のこと本当に好きだとか
そんな感じのこと言ってくれたり、してくれたりされるとかなり嬉しいかも。」
「そうか。それじゃあ今日はそれを考慮してしてやるよ。」
「おう。俺もテメェが言ったこと意識してしてみるぜ。」
お互いがどうすれば一番嬉しいかを確認すると、もう一度口づけを交わす。今度は唇が触
れるだけという軽いものではなく、口の中を弄り合うような激しい口づけ。何度も離れて
は重なり、どちらとも分からなくなった蜜の味を存分に味わう。
「ふぅ・・・ハァ・・・・」
口元から流れる唾液を拭うことなく、宍戸は離れていく跡部の顔を名残惜しそうに眺める。
そんな視線を向けてくる宍戸に、跡部は言いようもない興奮を覚える。
「跡部・・・」
「何だよ?」
「い、今のキスな・・・すげぇ気持ちよかったぜ。」
普段言わないようなことなので、宍戸の声はひどく上擦る。そんな宍戸の言葉を聞き、跡
部の心臓はドクンと跳ねた。ほんの一言ではあるが、それがたまらなく嬉しい。顔が自然
と赤くなっていくのを隠せぬまま、跡部はそれを誤魔化すかのように、宍戸の首に齧りつ
いた。
「ひっ・・あ・・・・」
「やっぱ、そういうこと言われると嬉しいぜ。もっと言えよ、宍戸。」
「お、おう・・・」
嬉しいと言われれば、やはり宍戸も嬉しい。他にどんなことを言えば喜んでもらえるかな
あと考えていると、ふと跡部の高まりかけている熱が目に入る。
「な、なあ、跡部。」
「あーん?何だ?」
「あのな・・・」
ふと今思いついたことを、宍戸は跡部の耳元でボソボソと伝える。それを聞いた跡部は、
思いきり顔を緩ませて頷いた。
「へぇ、悪くないんじゃねぇ?テメェがいいなら俺は大歓迎だぜ。」
「きょ、今日はクリスマス・イブだし、それくらいはしてもいいと思う・・・」
「なら、早速してみるか?」
「おう・・・」
跡部の言葉に頷くと宍戸は跡部をベッドの上に寝かせた。そして、自分は跡部の足の方へ
頭を向け、四つん這いのような状態で、跡部の顔を跨ぐように膝をつく。
「これで・・・いいのかな?」
「いいんじゃねぇ?こっちはイイ感じの場所にテメェのがあるぜ。」
「俺も位置的にはちょうどいい。うわあ、ヤベェ、超ドキドキしてんだけど。」
「それはこっちだって同じだ。それじゃ、始めるぜ。」
「わっ・・・ちょっと待てよっ!!あっ・・・」
目の前にそんなものを晒されて、跡部が我慢出来るわけがない。先に始められて、一瞬戸
惑う宍戸であったが、自分だけされるわけにはいかない。下半身から伝わる快感に震えな
がら、宍戸は先程よりも大きくなっている目の前のそれを口に含んだ。
「あ・・む・・・んっ・・・んん・・・」
口に含んでやれば、跡部の熱はさらに大きさを増す。そんな感覚にドキドキしながら、宍
戸は出来る限り口と舌を動かし、跡部のそれを刺激する。それと同時に、それ以上の刺激
が自分の熱に与えられる。相手を気持ちよくさせればさせるほど、自分も気持ちよくなれ
るその感覚に二人はすっかり夢中になってゆく。
「んっ・・く・・・ハァ・・・あっ・・・」
「ハァ・・・イイぜ。もっと吸えよ。俺もそうしてやるから。」
「ん・・・んんっ・・・んっ・・ん・・・」
跡部に言われるまま、宍戸は跡部のモノを思いきり吸ってみる。その瞬間、自分も同じよ
うに強く吸われる。すぐにでも達してしまいそうなその快感に宍戸は思わず口を離した。
「ぅあっ・・・跡部っ・・・」
「すげぇぜ。こっちの方もヒクヒクいってやがる。このまま咥えてたら、お前イッちまい
そうだしな。今はこっちを弄っておいてやるよ。」
「やっ・・・ちょっと待てよっ!・・・あっ・・ああ――っ・・・!」
宍戸が制止するのも聞かず、跡部はひくつき始めている蕾に指を一本挿入する。その指で
ゆっくりと内側を掻き回してやれば、すぐにそこはやわらぎ始める。
「宍戸、口がお留守になってるぜ。」
「だ、だって・・・あっ・・・やぁ・・・・」
「俺のこと悦ばせてくれるんじゃなかったのか?」
「うっ・・・ぁ・・・んん・・・」
蕾を弄られる快感に身悶えながら、宍戸は再び跡部の熱を口に入れる。しかし、先程のよ
うにまともに口を動かすことは出来ない。喉の奥で喘ぎながら、宍戸はとにかくそれを咥
え続けるしかなかった。
「ハァ・・・たまんないぜ、宍戸。」
「う・・・んっ・・・ん・・ぅん・・・」
宍戸に咥えられている恍惚感に浸りながら、跡部はさらに宍戸の蕾を激しく掻き回す。も
う一本指を増やすと、その指を広げるようにして狭い入り口を抉じ開ける。そして、その
部分を十分に濡らすかのように舌を使い丹念に舐め上げる。
「ひぁっ・・・!!」
「綺麗だぜ。お前のここ。赤い花が咲いてるみてぇだ。」
「やっ・・・んなとこ、舐めるなぁ・・・」
「ちゃーんと、濡らさねぇと痛いぜ。それにしても、ここ弄られてるだけでも相当感じて
るみてぇだな。前、さっきから先走り滴らせながらヒクヒク震えてるぜ。」
そんなことを指摘され、宍戸の顔をかあっと赤く染まる。そんな羞恥心が宍戸の体をさら
に敏感にさせる。
「跡部っ・・・俺、もう無理っ・・・!!」
「今のセリフでそんなに感じちまったか。」
「だ、だってよぉ・・・・な、なあ、俺、お前の口の中でイキてぇ・・・ダメか?」
「いや、全然ダメじゃねぇぜ。その代わり、テメェも俺のちゃんと咥えてろよ?」
「おう・・・」
ヒクヒクと先走りの蜜を溢れさせている宍戸の熱を跡部はもう一度咥え直す。それと同時
に宍戸も跡部のモノを咥えた。どちらともなく二人は相手の熱を思いきり吸った。宍戸が
限界だったのはもちろんだが、跡部もかなりキていた。強く吸われた瞬間、どちらも口の
中へと熱い精を放つ。
「んっ・・・んん―――・・・!!」
「くっ・・・ぅ・・・」
口の中に放たれた精を二人は喉を鳴らして飲み込む。口をそれから離すと跡部も宍戸も呼
吸を乱し、相手の熱が自分の中へと入っていく感覚に意識を向けた。
「ふ・・ぅ・・・」
「たまには悪くねぇな。69も。」
「そうだな・・・。なあ、跡部ぇ・・・」
「どうした?」
「こっち、もう・・・ヤバイんだけど・・・」
四つん這いになったまま、宍戸は先程まで跡部に弄られ舐められていた後ろの蕾に指を持
ってゆく。そんなふうに誘われては、跡部も堪えられなくなってしまう。
「どうヤバイんだよ?」
「だから・・・その・・・・」
「言ってみろよ。」
「跡部の・・・早く・・・挿れて欲しい・・・」
普段なら無理矢理に言わされるセリフを今回はいとも簡単に発する。する前に跡部とした
約束を守ろうと宍戸は必死なのだ。もちろん恥ずかしいと言えば、恥ずかしい。しかし、
そんなことよりも今は跡部に喜んでもらうことが宍戸にとっては重要だった。
「マジで今日は嬉しいことばっか言ってくれるじゃねぇか。」
「する前に約束したからな。」
「それなら俺もテメェの期待に応えてやらなきゃな。」
そう言うと跡部は四つん這いになったままの宍戸の蕾に自分の熱を押し当てる。まだ入れ
られてはいないのだが、次に来る快感への期待感から宍戸の身体はビクンと震えた。
「あっ・・・・」
「おいおい、まだ挿れてねぇぜ。」
「分かってるけど・・・」
「本当の快感はこれからだぜ。最高に気持ちよくさせてやるから、覚悟しとけよ?」
期待感に高まった身体に跡部は昂ぶりを取り戻した楔を打ち込む。舌と指で十分に慣らさ
れたそこは何の抵抗もなしに跡部自身を受け入れた。
「あっ・・・ああ――っ・・・!!」
「これじゃあ少しテメェにとっちゃ物足りねぇよな。もっと奥の奥で感じてぇだろ?」
繋がったままの状態で、四つん這いになっている宍戸の腹に手を回し、跡部はその身体を
ぐいっと起こす。跡部が座る上に乗せられるような形で腰を落とされ、宍戸は跡部の楔が
一気に奥の奥まで入ってくるのを感じた。
「っ・・・ぁ・・・・」
あまりの衝撃に声もまともに出せない。感じられるのは跡部と繋がっているという快感の
み。ビクビクと身体を震わせながら、宍戸は身体の全てを跡部に預けた。
「よすぎて、声も出ねぇか?」
「あっ・・・ぅ・・・あと・・べ・・・」
「このまま前とか擦ってやったら、かなり気持ちいいんじゃねぇの?してやろうか?」
今入れられているというだけでも壊れそうなほどの快感を感じているのに、前など擦られ
たらそれこそおかしくなってしまう。しかし、宍戸は激しく呼吸を乱し、目からは生理的
な涙を流しながらも、跡部の言葉に頷いた。
「天国に連れてってやるぜ、宍戸。」
冗談っぽくそう言いながら、跡部は宍戸の熱を擦り始めた。初めは緩やかに、そして、だ
んだんと激しく、時に止めてみたり先端だけを刺激してみたりと、様々な方法でそれを弄
り宍戸を喘がせる。
「やっ・・あ・・・あっ・・・あぁんっ・・・!!」
「どうよ?宍戸。今どう感じてるか言ってみろ。」
「すげぇ・・・イイっ・・・もう・・・変になっちまいそう・・・・」
「そんなにいいのかよ?だったら一回イっておくか?」
「・・・・っ・・・うあぁっ・・・・」
あまりに宍戸が気持ちよさそうにしているのに気分をよくして、跡部は奥を穿つとともに
前も一番敏感なところを擦ってやる。後ろも前もぐちゃぐちゃに弄られ、宍戸は耐えられ
ずに真っ白な熱を放った。
「まだまだたくさん出るじゃねぇか。」
「ハァ・・ハァ・・・あ、跡部・・・・」
「少し休むか?連続二回はキツかっただろ?」
珍しく優しいことを言ってくる跡部の言葉に宍戸は首を振る。うまく力の入らない体に必
死で力を入れ、いったん跡部の熱を自分の中から抜くとくるっと跡部の方を振り返り、跡
部の体をベッドの上に倒した。
「おい・・・宍戸?」
「跡部、まだイってねぇだろ?今度は俺がテメェを気持ちよくさせてやる番だ。」
そう言って宍戸は跡部に体を跨ぎ、自ら跡部の熱を自分に中に挿入する。
「あっ・・・あん・・・」
「くっ・・・宍戸・・・・」
まだ落ち着いていない身体はすぐにその感覚を呼び戻す。跡部の楔が自分の内側を擦る快
感を宍戸は自ら求め、激しく腰を揺らす。そんな宍戸の姿を、跡部は夢を見ているのでは
ないかと思うほどの感動を覚えながら眺める。
「あっ・・・はぁんっ・・・跡部、気持ちイイか・・・?」
「ああ。最高だぜ・・・」
「よかっ・・た・・・俺もな・・・超気持ちイイぜ・・・」
ニッコリと笑いながらそんなことを言う宍戸に、跡部は本気で魅せられる。背筋に走る痺
れるような感覚に跡部は耐えきれずに宍戸の中で達した。内側に熱い精が放たれるのを感
じ、宍戸は再び快楽の高みに達する。
「ふっ・・ああ・・・!!」
もう快感しか感じなくなった身体を宍戸は跡部の体の上に倒す。いまだに繋がったままの
そこからは跡部の放った熱がコプリと滴っている。自分の上で虚ろな目をしながら呼吸を
整えられないでいる宍戸を見て、跡部は異様な興奮を覚えた。その瞬間、今達したばかり
のそれは再び固さを取り戻し始める。
「大丈夫か?宍戸?」
「ああ・・・」
「お前、もうこれで限界か?」
「いや・・・そんなことはねぇけど・・・・」
妖しげな光を持った眼差しで見つめられ、宍戸は動揺してしまう。まだ跡部のそれは中に
入っているため、跡部の言葉がどういうことを表すか言われずとも分かってしまったのだ。
「悪ぃ。俺のまだ治まらねぇんだ。後一回くらいいか?」
「いいぜ。今度は正常位でいこうぜ。」
今日はとことん跡部に付き合ってやれと宍戸はふっと笑いながら頷く。そんな宍戸を見て、
跡部もさらにやる気になる。繋がったまま起き上がり、今度は宍戸をベッドの上に倒した。
「俺のが残ってるから、簡単に動かせるな。」
「ああ。今も腹ん中超熱くて、すげぇ気持ちイイぜ。」
一度高まってしまうとすぐにでもまたあの快感へと向かいたくなってしまう。お互いに顔
を見合わせ、抱き合うような形で二人は再びお互いの熱を求めた。
「あっ・・・あ・・・あん・・あぁ・・・!!」
「宍戸っ・・・」
「跡部っ・・・はぁっ・・あ・・・んぁ・・・・」
「宍戸、テメェだけは絶対に誰にも渡さねぇ。こんなことをしていいのも俺だけだ。」
熱に浮かされたように跡部はそんなことを呟く。それを聞いて宍戸はぎゅっと跡部の首に
抱きついた。
「そんなの・・・当たり前だろっ・・・俺だって、絶対テメェの側から離れねぇ!!」
「だったら、俺のこと好きだって言え。俺が満足するくらいに!」
「跡部・・・好き・・・好き・・・」
「もっと、もっとだ!」
既に二人の思考はほとんど働かない状態になっていた。繋がる体が無意識に求めているも
の、それが言葉となって二人の口から発せられている。跡部に言われるまま宍戸は何度も
何度も好きという言葉を繰り返す。そして、跡部はそれを聞き、心が満たされるのを感じ
る。そんなものが最高に高まったとき、二人は再び絶頂を迎えることとなった。

いつもより長く激しい行為を終え、二人は少々ぐったりしながらベッドに身を横たえる。
「跡部ー。」
「あーん?」
「跡部の言ってたクリスマスプレゼントって、本当にお前ってので終わりなのか?」
ふとする前にしていた話を思い出し、宍戸はそんことを尋ねる。あまりにもさっきの情事
が気持ちよかったので跡部はそんなことはすっかり忘れていた。
「あー、いや、まだあるぜ。」
「テメェ、忘れてただろ。」
「そ、そんなことねぇぜ。ちょっと待ってろ。今持ってきてやるから。」
そう言うと跡部は机の一番下の引き出しから、小さな宝箱のようなものを出してくる。跡
部らしくないデザインのその箱に宍戸は興味津々だ。
「何だよ?それ。」
「一般的に言う宝箱ってやつだな。まあ、ガキのころのだけどよ。」
「へぇ。跡部もそんなもん持ってんだな。俺の場合はお菓子かなんかの缶だけどよ。」
跡部も人並みにそういうものを持っていたのかと思うと宍戸は何だか嬉しくなる。そんな
宝箱を開けて跡部は一つの透明な玉を出した。そして、それを宍戸の手の平に置く。
「へー、綺麗な玉だな。跡部が持ってるってことはクリスタルか何かで出来てるのか?」
「いや、それはただのガラス玉だ。」
「ガラス玉?何で跡部がこんなもん宝箱なんかに入れてんだよ?」
「俺もハッキリとは覚えてねぇんだけどよ、とにかくガキのころはそのガラス玉が大事で
大事で仕方なかったんだ。だから、今でも宝箱に入って残ってんだけどな。たぶん俺が生
まれて初めて綺麗だと思ったものなんじゃねーの?」
「なるほどね。で、これがどうかしたのか?」
「それ、テメェにやるよ。三つ目のクリスマスプレゼントだ。」
宝箱に入っていて今の今まで残ってたうえ、昔は大事で大事で仕方なかったという話を聞
いた後で、そんなことを言われれば、はいそうですかと言って受け取ることは出来ない。
何でそんな大事なものを自分にくれるのか宍戸には理解が出来なかった。
「いや、これはテメェの宝物なんだろ?そんな宝物をもらうなんて俺には出来ねぇよ。ガ
ラス玉なんて、今の跡部にとっちゃ大した価値のねぇもんなのかもしれねぇけど、今まで
とっておいたってことはやっぱ今でも大切なんだろ?」
「ああ。今でもすげぇ大切だと思ってるもんだ。」
「だったら、なおさらもらえねぇぜ。」
「分かってねぇなあ。」
苦笑しつつ跡部は、そのガラス玉を宍戸の手に握らせる。そして、穏やかな笑顔を浮かべ
ながら、そのガラス玉をクリスマスプレゼントに選んだ理由を話し始めた。
「確かにそのガラス玉は俺の宝物だ。少しガキくせぇけどな。けどな、そのガラス玉と同
じくらい、いや、それ以上に、俺はテメェのことを宝物だと思ってる。テメェがそのガラ
ス玉を持っていてくれれば、俺は一度に二つの宝物をこの手に抱くってことになるわけだ。
それってかなり贅沢なことだと思うぜ。なあ?」
「た、確かにそうだけどよ・・・マジでもらっちまってもいいのか?」
跡部の言うことは分かるがまだ納得いかないと宍戸はもう一度聞き返す。本当に素直で優
しい奴だなあと思いつつ、跡部は自分の額を宍戸の額にくっつけて答えた。
「いいんだよ。テメェはさっき心のこもったプレゼントを俺にくれたじゃねぇか。俺もそ
ういうもんがあげたかった。金で買えるようなものじゃなくてな。そう考えたときに思い
浮かんだのがこれだったんだよ。」
「で、でもっ・・・・」
「お前が素直にそれを受け取ってくれることが、俺にとっては一番嬉しいことだぜ?」
そう言われてしまっては、宍戸も受け取らないわけにはいかない。かなり近い距離にある
跡部の目を見て、恥ずかしそうにお礼を言う。
「ありがとう。」
「どういたしまして。」
「俺、これすっげぇ大事にするから。跡部が今まで宝物にしてたみたいに、俺もこのガラ
ス玉、宝物にする!!」
「サンキューな。」
跡部はこの言葉が宍戸の口から聞きたかったのだ。自分が宝物だと思っていたものを、宍
戸も同じように思って欲しい。宝物の共有。それが跡部はしたかった。それが実現した今
跡部は本当に幸せそうに笑う。
「なあ、宍戸。」
「何だよ?」
「いや、何でもねぇ。」
「んだよ、話しかけたなら最後まで言え!!」
「愛してるぜ。」
心を込め、跡部は宍戸の耳元でそう囁く。そんな言葉を聞いて宍戸の顔は真っ赤になった。
しかし、真っ赤になりながらもその顔は嬉しそうに笑っている。星の輝くクリスマスの夜。
一つの流れ星とともに、サンタクロースはこの二人のもとにもやってくるのであった。

                                END.

★他のも見てみようと思う方は・・・★
−滝鳳−  −岳忍−

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