忍足の手を引き、岳人がやってきたのは、明るい街からは少し離れた場所にある小さな教
会だ。外観はかなり古びていて、クリスマスらしい装飾は全くされていない。暗闇に浮か
ぶようなその教会を見て、忍足は思わず足を止める。
「どうしたんだよ?侑士。」
「いや、別に・・・」
「あの教会な、今月の終わりには取り壊されちまうんだよ。見ての通りボロボロだしさ。
でも、今日はクリスマス・イブだろ?クリスマスって、キリストの誕生日なんだからこう
いうとこに来るのも悪くないかなあと思ってさ。」
「勝手に入って大丈夫なん?」
「本当はダメなんだろうけど、もう取り壊されちまうんだし、一晩くらい大丈夫だろ。」
「一晩?一晩もあないなところにいるん?」
パッと見薄気味悪い教会に一晩もいるなど耐えられないと忍足は、あからさまに嫌そうな
顔をし、そんなことを漏らす。しかし、岳人はあっけらかんとした様子で頷いた。
「一晩はいないかもしれねぇけど、まあ朝まではいるんじゃねぇ?」
「それを一晩言うんやで。」
「別に心配することねぇって。ここらへんあんまり人来ないしな。教会の人もここ何ヶ月
か全く来てないらしいぜ。」
それなら余計に心配だと不安気な表情で忍足は岳人を見る。そんな忍足に構うことなく岳
人は手を取ったまま教会の入り口に向かって歩き出した。まだ怖いという感情が抜けない
が、岳人がそこまで言うのなら仕方がない。妙な緊張感を感じながら、忍足は岳人が自分
の手を引くのに身を任せた。
教会の中に入ると、思っていたほど気味の悪いところはなく、いたって普通の教会であっ
た。ただ他の教会と違うのはステンドグラスの大きさと豪華さだ。この教会にあるステン
ドグラスは外から見た小さな様相には似合わないほど大きく、一つ一つが非常に精巧に作
られていた。
「真っ暗やん。」
「うーん、もう電気は通ってねぇみてぇなんだよ。でもさ、あそこに暖炉があるだろ?あ
れはまだ使えるみたいなんだよな。」
「暖炉か。まあ、この寒さやし、何か暖房器具ないとちょっとキツイよな。」
薄暗さは我慢出来るとしても、真冬の夜の寒さはさすがに何もない状態では耐えられない。
なので、暖炉があると聞いて忍足は寒さ対策という点ではホッとした。
「それからさ、あのステンドグラスの下に確か蝋燭が何本かあるんだよ。それに火つけれ
ば少しは明るくなると思うぜ。」
「へぇ。随分、詳しいんやな。」
「一回、ジローと探検しに来たことがあってさ。そんときにいろいろ調べたんだよ。」
「なるほどな。」
こんなところにまで遊びに来るとは、さすがジローと岳人だと忍足は素直に納得する。想
像していた様相と大分違う教会の中の様子目にして、忍足の恐怖心はだんだんと薄れてい
っていた。
「んじゃ、向こうの方まで行こうぜ。」
祭壇の方を指差し、岳人はどこかわくわくとした表情を浮かべながら忍足に言う。
(まあ、クリスマス・イブやし、こんなとこで過ごすのも悪くないか。)
やっと忍足もこの教会で聖夜を過ごすことを受け入れたようで、ふぅと小さく息を吐くと
前を進む岳人を追いかけるようにして歩き出した。祭壇のところまでくると、岳人はまず
暖炉に火をつける。
「おっ、いい感じにつきそうだぜ。」
「なあ、こっちにある蝋燭もつけていい?」
「ああ。ほい、ライター。」
暖炉に火がついたことを確認すると、岳人はステンドグラスの下に立っている忍足に向か
ってライターを投げる。忍足はそれをしっかり受け取り、目の前にある何本かの蝋燭に火
を灯し始めた。
「へぇ、蝋燭だけでも結構明るくなるもんやな。」
「本当だ。ここまで明るくなるとはちょっと予想してなかったぜ。」
思った以上に明るくなった周りを見渡し、二人は何となくホッとする。蝋燭のすぐ真下で
話しているのもよいが、まだそのあたりは暖まっていない。もう少し暖かい場所へ移ろう
と二人は暖炉の前まで移動した。
「いい感じに暖まってきてんな。」
「せやな。」
「なあ、侑士、せっかくのクリスマス・イブなんだしさ、そういうことしたくねぇ?」
急に真面目な顔になり、岳人はそんなことを忍足に尋ねる。何となく予想はしていたもの
の、いざ言われてみると思った以上に心臓が高鳴る。
「えっ・・あ・・・そういうことって、そういうこと?」
「ははは、まあ、そういうことだな。」
全く言い換えになってない忍足の言葉に岳人は思わず声を上げて笑う。しかし、そんな岳
人とは裏腹に忍足はあまりにもドキドキしすぎて笑っている余裕などなかった。
「なあ、いいだろ?侑士。」
「ホ、ホンマにこないなところでするん?」
「うん。言っただろ?侑士には最高のラブロマンスを味あわせてやるって。クリスマスに
こんな場所でそういうことするなんて、すげぇロマンチックじゃねぇ?」
ラブロマンスという言葉を聞き、忍足の心が一気にぐらついた。岳人の言う通り、クリス
マス・イブの夜に古びた教会で体を重ねるなど、そんなによいシチュエーションは映画の
中の話でもそう滅多にない。これはなかなか出来ない経験だと、忍足は心を動かされつつ、
岳人の顔をじっと見る。
「岳人・・・」
「うん。」
「岳人は・・・ここでそういうことしたいと思うん?」
「もちろんだぜ。」
「俺も・・・したい。」
蝋燭の光に照らされる忍足の頬は綺麗な紅色に染まっていた。そんな忍足を見て、岳人は
ドキンとしながらも、ふっと笑う。ゆっくり忍足を座らせ、自分もしゃがむと忍足の前髪
をかき上げ、額に優しくキスをする。
「侑士。」
「何?」
「キリスト教ってさぁ、いろんな人に愛を与えるんだよな?」
「隣人愛のことか?」
「そうそう、それ。」
「それがどないしたん?」
「キリスト教だったら、他の人みんなに与えなきゃいけない愛、俺は全部侑士にあげる。」
ニッコリと笑いながらそんなことを言う岳人に、忍足は完璧に落ちた。もうこの後、どう
なってもいい。岳人になら自分の全てをあげてもいいと忍足はそんな気持ちで胸がいっぱ
いになった。
「俺も・・・岳人に全部くれてやるわ。」
「サンキュー、侑士。」
その一言を合図として、二人の聖なる夜が始まった。
暖炉の前に座ったまま、二人は向かい合っている。まだ完全には暖まっていないので、岳
人はすぐには忍足の服は脱がさず、服の中に手を入れるような形でいろいろな部分を弄り
始めた。
「ひゃっ・・・岳人、手ぇ冷たい。」
「あー、悪ぃ悪ぃ。外、随分寒かったのに侑士の体はあったけぇな。」
「服の中やもん。そんなに直接は冷えんやろ。」
「ホッカイロ触ってるみてぇ。特にこのあたりとかすげぇあったかいぜ。」
「やぁっ・・・」
悪戯に笑いながら岳人はわざと忍足の胸の飾りに触れてみせる。冷たい手で敏感な部分に
触れられ、忍足は思わず普段の声よりいくらか高い声を上げる。
「俺の手、冷たいからいつもより感じるだろ?」
「そ、そないなとこ・・・触るなや。」
「でも、触った感じとしてはかなりイイ感じだけど?」
「うあっ・・・ダ、ダメや、岳人っ・・・」
きゅっと指の先で抓まんでやると、忍足はさらに大きな反応を見せる。ビクンと身体を震
わせ、先ほどよりもさらに紅く染まった顔で岳人を見た。
「今の侑士の顔、超誘ってるみたいだぜ。」
「そないな顔・・・してへん・・・」
「なんかもう服の着たまんまじゃ、我慢出来なくなってきた。脱がしていい?侑士。」
もう寒いとか寒くないとかそういうことは感じなくなってきている忍足は、岳人の問いに
黙って頷く。さすがに全裸のままだと寒いので、全ての服を取り去ってしまった後、一番
上に羽織っていたコートだけを岳人は忍足の肩にかけてやった。
「寒くねぇ?大丈夫か。」
「ああ。全然平気やで。」
「侑士の今の格好、すっげぇそそられる。さっき俺が触ってたとこ、綺麗に赤く染まって
るし。」
指の先でトンっと軽く触れられるようにして指摘され、忍足の顔は羞恥に染まる。そんな
忍足の反応を楽しみながら、岳人は露わになっている忍足の肌に唇を寄せた。
「赤くて、超うまそー。ちょっと味見しちゃお。」
「いっ・・やぁ・・・あっ・・・・」
赤く熟れた小さな実を岳人は唇をつけたまま舌で転がす。さっき指で弄られていたことも
あり、その実はかなり敏感になっていた。ちゅっと軽く吸ってみたり、小さく甘噛みして
みたり、そんなことをしてしばらく遊んでいると、だんだんと岳人自身の体温も上がって
きた。
「何か暑くなってきた。」
「はぁ?・・・何言うとんねん。」
「侑士がイイ反応見せてくれるからさ、すっげぇドキドキして体温上がってんの。」
「それなら俺の方がもっとあからさまに上がっとるで?」
「はは、そりゃそうだよな。心臓だってこーんなドキドキ速くなってんだもんな。」
そう言いながら、岳人は忍足の心臓がある部分にちゅっとキスをする。そんなことにも忍
足は感じてしまう。
「んっ・・・」
「もっと、こっちを弄ってたい気がするけど、こんなになってるの見せられたら、こっち
の方も食べたくなっちゃうよなあ。」
先程まで舌で転がして遊んでいた部分に触れながら、岳人はそんなことを言う。手が触れ
ているのは胸の飾りの方なのだが、視線は明らかにもっと下の方に向けられていた。いつ
もとは違う雰囲気の中、じっくり胸の突起を弄られ、忍足の熱は既に先走りの蜜が溢れん
ばかりに高まっている。
「さっきのそんなに気持ちよかった?」
「うっ・・・」
「こんなになってんだもんな。こっちもうまそー。」
忍足の顔を見上げながら、岳人は小さな体をさらに屈める。そして、アイスキャンディー
を口に含むかのように忍足のそれを口に入れた。
「あっ・・・!」
「ちょっと口に入れただけなのに、一気に大きくなったぜ。」
「そんなことないっ・・・!!」
「どこから舐めて欲しい?ここ?それともここ?」
「ひぁっ・・・あ・・・」
小さな子供がおもちゃを弄るかのように、岳人は忍足の熱の特に感じる場所を指でなぞる。
少し触れられるだけで、堪らないほどの快感を感じ、忍足はぎゅっと目をつぶった。
「目閉じないで、侑士。俺が侑士のしてるとこ、ちゃんと見て。」
「そ・・んな・・・」
「ほら、侑士のコレ、俺に咥えられてこんなに悦んでるんだぜ。」
「い・・やっ・・・やっぱり、見られへんっ!」
「ダメ。侑士、ちゃんと見て。」
決して命令するような感じはないのだが、忍足にとってはそう言われたら見ざるを得なく
なる。どうしようもない羞恥心を感じながら、忍足は目を開き、自分の下腹部へと視線を
落とす。忍足が自分を見ていることを確認しながら、岳人は見せつけるかのように忍足の
熱をじっくりと舐め回した。
「あっ・・・いや・・岳人っ・・・!!」
感覚的な刺激と視覚的な刺激が重なり、忍足はいつもより敏感に感じてしまう。岳人の口
が動くたび、ぞくぞくするような快感が全身を駆け抜ける。岳人が軽く先端を吸ってやれ
ば、たちまち忍足の身体はぶるりと震える。
「うっ・・ああっ・・・アカンっ・・・!」
「今日の侑士、超感じやすくねぇ?」
「だ、だって・・・岳人が・・・・」
「自分がされてるの見ると興奮するだろ。」
「岳人・・・今日、しゃべりすぎや・・・」
「今日はクリスマスだからな。いつもとちょっと違うような感じにしたいんだよ。」
「だからってっ・・・ふっ・・ぁ・・・」
文句を言おうと思っても頭がついていかない。言葉で攻められているよな気もするが、こ
こまでくるとそれさえも気持ちよくなってしまう。ぴちゃぴちゃとわざとらしく音を立て
ながら自分のモノを咥えている岳人を見て、忍足はいつも以上に興奮する。
「ハァ・・・んっ・・んぅ・・・」
「気持ちイイ?」
「んんっ・・・はぁ・・・よくないわけないやん・・・」
「そっか。」
イイというニュアンスを含んだ忍足の言葉を聞き、岳人は嬉しそうに笑う。そろそろイカ
せてやろうかと考え、岳人は忍足の限界近くまで高まった熱の先端部分だけを口に含み、
思いきり吸い上げた。それと同時に口に含んでいない部分を利き手を使って擦ってやる。
「ふっ・・あ・・・ああぁっ!!」
当然そんな刺激に忍足が耐えられるはずがなく、岳人の口の中に熱いミルクをたっぷり放
つ。最後の一滴まで逃しはしないと岳人は忍足の身体がビクビクと痙攣している間は、決
してそれから口を離さなかった。
「ふぅ・・・ごちそうさま。侑士のミルク、すげぇ熱くて最高だったぜ。」
唇に残った白い蜜を舌で舐め取りながら、岳人は体を起こして満足そうに溜め息をつく。
とろけそうな快感の余韻に浸る忍足は、すっかり体の力が抜けてしまい、その体を岳人に
預けた。
「岳人・・・ホンマにこういうこと上手くなったなぁ。」
「そうか?へへー、まあ、俺も日々成長してるってことだ。」
「ホンマに気持ちよかったで。もう頭ン中溶けてしまうんやないかってくらいな。」
「まだ前戯だぜ?これからが本番だっての。」
冗談めいた会話を交わしながら、二人は少し体を落ち着ける。ある程度呼吸も整い、落ち
着いてくると、忍足は岳人にもたれかけていた体を起こし、一度大きく深呼吸をする。
「はあ・・・なあ、岳人。」
「何?」
「俺も岳人のしたいんやけど、してもええ?」
「へっ?マジで?」
「クリスマスなのに、俺だけ気持ちよくなるって不公平やん?俺も岳人のこと気持ちよく
させたい。」
「俺はもう大歓迎だぜ!って、でも、マジでいいの?」
「ああ。今日は大サービスや。」
思ってもみない忍足の提案に岳人はドッキドキ。だが、もちろんこんなオイシイことをわ
ざわざ断るはずがない。せっかくしてくれると言うのならしてもらおうと岳人は祭壇にヒ
ョイッと座った。
「侑士の身長だと、屈むよりこっちのが楽だろ?」
「せやな。膝つけばちょうどいい高さって感じやし。」
「じゃあ、これでお願い♪うわあ、侑士にしてもらえるってマジ嬉しいんだけど。」
「そんなに上手くないかもしれへんけど、そこらへんは堪忍な。」
岳人の穿いているズボンのジッパーを下ろし、忍足は露わになったそれをマジマジと見つ
める。
「そんなに見られると、恥ずかしーんだけど。」
「いや、何もしてへんのにこんなになるんやなあと思て。」
「侑士があんまりにも可愛いからこうなっちまうんだぜ。」
「なるほどなぁ。よし、じゃあするけどええよな?」
「おう。」
話しているのも楽しいが、やっぱり先に進みたい。ゆっくり息を吸うと控えめに口を開き、
忍足は岳人の熱を含む。口の中でより大きくなるそれに忍足の心臓はドクンドクンと高鳴
る。
「ふ・・・ん・・んぅ・・・・」
「超イイぜ、侑士。」
「ハァ・・・岳人のすごい熱いなぁ。」
「侑士にこんなことされてるんだぜ。こうなっちまうのも仕方ないって。」
笑いながらも呼吸を乱している岳人の言葉を聞き、何となく嬉しくなる。もっともっと岳
人のことを気持ちよくさせてあげたい。そんな気持ちから、忍足は一生懸命口と舌を動か
し、岳人を追いつめていった。
「ふはぁ・・・あ・・む・・・んん・・・」
「ハァ・・・すげぇ、堪んないぜ侑士。」
「んっ・・・んぅ・・・ん・・・」
「そろそろ、限界かも・・・」
あまりの気持ちよさに岳人は震える手で、忍足の髪を掴んだ。そんな岳人の顔を忍足はチ
ラッと見る。自分のしている行為で非常に気持ちよさそうな表情になっている岳人を見て、
忍足は何故か自分自身イってしまいそうなほどの快感を感じる。
(何やろ?この感覚・・・・)
岳人に同調するかのように感じる快感に忍足は思わず声を上げてしまう。
「んっ・・・あ・・・」
「侑士・・・?」
「アカン、岳人のしてると俺の方まで感じてまう・・・」
潤んだ瞳で見上げられ、岳人はそれだけでもう耐えられなくなるのではないかと思うほど
興奮する。
「そんなにイイ顔されたら、それだけでイっちまいそうになるんだけど。」
「まだ、ダメや。ちゃんと俺の口ン中に出して。」
「いいのかよ?」
「当たり前やろ?岳人のなら大歓迎やで。」
ふっと微笑みながら再び忍足は岳人の熱を咥える。そんなことを言われたら、岳人ももう
耐えられなくなる。ほんの少し口を動かされ、吸われただけで達してしまった。
「くっ・・・侑士っ・・・」
「んっ・・んんっ・・・ん・・・・」
放たれる熱を零すことなく忍足は喉を鳴らして飲み込む。その瞬間、身体の外側だけでな
く、内側からも熱くなっていくような感覚に言いようもない恍惚感を覚えた。
「んん・・・ハァ、岳人、ホンマに俺、今日はアカンわ。」
「何が?」
「岳人とこういうことしてんのが、気持ちよくてしゃあないねん。・・・今も早く繋がり
たくて、後ろが疼いとる。」
「侑士・・・それ超誘い文句だぜ。そんなこと言われたら俺手加減出来なくなっちまう。」
「ええよ、もう。でも、痛くするのはなしやで。」
「分かってる。二人で最高に気持ちよくなろうぜ。」
祭壇から下りると岳人は忍足と繋がるため、既に触れられたくて疼いている蕾を咲かせる
ように慣らす。ある程度その蕾がほころび始めると、岳人は忍足の手を引き、蝋燭の下ま
で移動した。
「大分このあたりもあったまってきたし、繋がってるときくらい顔がハッキリ見えた方が
いいだろ?」
「せやな。・・・・なあ、岳人。」
「分かってるって。早く繋がろうな。」
岳人がそう言ってそっと唇にキスをすると、それを合図とするかのように忍足は座ってい
る岳人の足を跨ぎ、自ら再び勃ち上がっている岳人の熱に蕾をあてた。そして、ゆっくり
と腰を下ろし、自分の中へ岳人を取り込んでゆく。
「あっ・・ああ・・・・」
「たまにはこういう体位もいいな。侑士の顔がこんなに近い。」
「なぁ・・・岳人っ・・・全部は自分では入れられへん。ちょっと手伝ってぇ・・・」
呼吸を乱しながら忍足はそんなことを岳人に頼む。岳人は忍足の腰を支え、その手に力を
込めて下に下げてやった。何の抵抗もなくズブズブと奥の方へ入っていく感覚に忍足は顎
を仰け反らせ、濡れた声を漏らす。
「ふあぁっ・・・!」
「すげぇぜ。全部侑士の中に入っちまった。」
「あっ・・・岳人・・・あ・・ん・・・」
「侑士、この体位だと俺は満足に動けねぇ。だから、侑士がいいと思うように動けよ。」
「う・・・ん・・・」
座っている上に乗るような状態で繋がっているので、岳人はほとんど動けない状態だ。な
ので、動かすという作業は忍足に全てを任せるしかない。初めはまだ羞恥心が残っている
のかぎこちなくしか動けない忍足だったが、そのうちひたすら快楽を求めるかのように、
艶めかしく腰を揺らすようになる。
「あっ・・はぁん・・・あ・・・あぁ・・・」
「イイぜ、侑士。もっともっと動いて、イイ声聞かせろよ。」
「やっ・・・んぁ・・・これ以上・・・動いたら・・・変になってまう・・・」
「変になっちゃえよ。俺はもっと乱れた侑士が見たい。」
「あ・・ふっ・・・ぅん・・・なら・・・岳人も何かしてや・・・」
何かして欲しいと言われても、今岳人に出来ることは、すっかり熱さを取り戻した前にあ
るそれに触れるくらいだ。それでもいいのならと、岳人は利き手を使ってそれを擦り始め
た。その瞬間、忍足の身体はビクンと跳ねる。
「ひあっ・・・あぁ・・・!」
「やっぱ、こっち触られると違う?」
「全然・・・・違っ・・・ヤバイ・・・ホンマに気持ちよくて・・・どうにかなってまい
そうや・・・」
「俺も今の侑士見てたらどうにかなっちまいそうだぜ。綺麗で、色っぽくて、やらしくて
・・・・どんなプレゼントも敵わないくらい、俺のこと悦ばせてくれる。」
「それなら・・・俺だって同じやで。こんな場所でこういうことするのはホンマはいけな
いのかもしれへんけど・・・そんな罪悪感吹っ飛ばすくらい・・・・今、最高に幸せや。」
「すっげぇ嬉しい。今日はもういけるとこまでいこぜ、侑士。」
「ああ・・・・」
ステンドグラスから差し込む月光と真っ赤に燃える蝋燭に炎に照らされて、二人はこれ以
上ないほど乱れてゆく。古びた教会の窓の下、胸に天使の翼を携えた二人は身体を重ねる
ことによって、身も心もお互いのハートで満たし合うのであった。
聖夜のお楽しみを終えた二人はしっかりと服を着て、祭壇の上に座り、大きなステンドグ
ラスを眺める。
「ホンマに綺麗なステンドグラスやなあ。」
「ああ。これも壊されちゃうんだよなあ。勿体ねぇ。」
「でも、仕方ないんちゃうん?形があるものはいつか壊れるときがくるわけやし。それが
早いか遅いかの違いだけや。」
「そうだけどさぁ・・・ん、あれ?でも、そう言えるんだったら・・・」
「何や?」
忍足が寂しげに笑いながらそんなことを言うのを聞いて、岳人はふとあることに気づく。
『形があるものはいつか壊れるときがくる』こういうことが言えるのであれば、逆のこと
も言えるのではないか。つまり・・・
「形があるものはいつか壊れるときがくるんだったら、その逆もあるってことだよな?」
「どういうことや?」
「形のないものは壊れない。」
自分でもそれがあっているかいないかは分からないが、岳人はキッパリとそう言う。確か
に論理的には何も間違ってはいない。しかし、その言葉で岳人が何を言いたいか忍足はこ
の時点では理解していなかった。
「確かにそうも言えるよな。でも、それがどないしたん?」
「うーん、何つーかさ・・・俺が侑士を好きだって思う気持ちってのには形がないじゃん。
もちろん侑士が俺を好きだって思ってくれてる気持ちにも。」
「せやな。」
「さっきの論理が成立するんだったら、こういう気持ちは絶対壊れないことになるなあと
思って。」
「・・・・・・」
ナチュラルに口説き文句のようなことを言ってくる岳人に忍足は思わず言葉を失ってしま
う。お互いを好きだという気持ちは絶対に壊れない。そんなことを言われれば、少なから
ずときめいてしまうだろう。
「岳人って、時折、ビックリするほどええこと言うよな。」
「そうか?」
「ああ。今の言葉、すごいロマンチックなセリフだったと思うで。」
「マジで?へへー、何かちょっと嬉しい。」
「形のないものは壊れないか。ええ言葉やん。」
「形はなくてもちゃんと感じることは出来るだろ?さっきみたいなこととかこういうこと
とか。」
そう言いながら、岳人はちゅっと忍足の唇にキスをする。少し驚く忍足であったが、確か
にそうやとくすくす笑う。
「こういうことして、嬉しいとかドキドキしたりとか暖かいて感じるのが、そういう気持
ちがあるって証拠やもんな。」
「おう!なあ、侑士。このステンドグラスももうすぐ壊されちまうけど、俺らはきっとこ
のステンドグラスを見たこと忘れないだろ?」
「まあ、この下であないなことしたからなあ。忘れられんやろ。」
「だったら、このステンドグラスは完全には壊れねぇ。俺達の心の中に残ってるからな。」
「ふっ、そやな。」
岳人の言葉に忍足は微笑みながら頷く。もう一度ステンドグラスに目を移しながら、二人
は祭壇に置いている手を重ね合わせた。月明かりの差し込むステンドグラスはこれ以上な
く美しく輝いている。あと少しでこのステンドグラスは壊されてしまう。しかし、この下
で聖夜の契りを交わした二人の心からは消えることはない。形のないものは壊れないのだ
から。
「あっ、岳人。もう日付変わっとるで。」
「マジで?それじゃあ、あれ言わなきゃだな。」
「せやな。」
何気なく時計に目を落とした忍足は岳人にそんなことを知らせる。日付が変わったという
ことはもうクリスマスなのだ。クリスマスになったということで、二人はあらためて口づ
けを交わし、この日を祝うあの言葉を言う。
『メリー・クリスマス。』
この教会にも祀られている聖者の誕生日を、岳人と忍足は幸せいっぱいの微笑みと溢れん
ばかりの愛をもって祝うのであった。
END.
★他のも見てみようと思う方は・・・★
−跡宍− −滝鳳−