「おい、宍戸。用意出来たか？」
「何の用意だよ。」
「そんなの決まってんだろ？」
跡部は自分のベッドに宍戸を座らせ、上から笑いながら見下ろした。その態度に宍戸は少
しムッとしたが、半分くらいはドキドキとわくわくが頭の中を占めていた。
「う・・・ぅん・・・ふ・・・」
無愛想だが、ほのかに赤くなっているその顔に半ば強引に口付ける。半分程開かれた宍戸
の口の中に跡部の舌が滑り込んだ。宍戸は苦しそうな声とは裏腹に跡部のキスを出来るか
ぎり味わう。
「んっ・・・ぁ・・・んん・・ふぅ・・・」
そんな宍戸を跡部は口の中を探りながら、目を開いてじっくりと見る。あまりにも艶かし
いその表情に跡部は興奮し始めていた。
「んんっ・・・・はぁ・・・」
「いい顔だぜ宍戸。」
銀色の糸が名残惜しさを示すように、二人の口を繋ぐ。跡部は軽く宍戸の口を拭い、パジ
ャマを脱がそうと宍戸に腕を上げるように言った。
「宍戸、腕上げろ。」
もう跡部に魅せられているのか、宍戸は跡部の言う通りに腕を上げる。座ったままの状態
で跡部は宍戸の服を脱がした。そして、上半身を中心にキスの雨を降らせる。
「あっ・・・や・・跡部っ・・・」
「宍戸。」
「んっ・・・あっ・・・何だよ？」
「さっき、何か一つ言うこと聞くって言ったよな。」
「・・・・言ってない・・・」
「嘘つくな。俺はこの耳でちゃーんと聞いたぜ。」
「うあっ・・・わ、分かった・・・言った・・・言いました・・・」
「だったらよ、このあと全部して欲しいこと全部言ってみろよ。」
「なっ！？・・・そんなこと・・・出来るか！！」
「だったら、今日はもうしねぇ。お前が言ったことだけしかしてやんねぇよ。」
ここまでされてやめられたくはない。もちろん跡部だって、ここで終わらせたくはないは
ずだ。だが、いじめっ子跡部は宍戸が恥ずかしさに耐えながら、自分にして欲しいことを
言う姿が見たくてしょうがないのだ。
「・・・ここでやめるな・・・」
「お前がして欲しいことを言ったら、普通に続けてやるぜ。」
宍戸は頭の中で葛藤を繰り返す。
何で跡部はこういうふうに俺のこといじめるんだよ。やめて欲しくないのも分かってるし、
そんなこと言える程、俺が大胆じゃないことだって分かってるはずなのに〜。まあ、跡部
だからしょうがないっつったらしょうがないけどさー。う〜、マジでどうしよー・・・。
「やめていいのかよ？宍戸。」
からかうように跡部は言う。宍戸は羞恥心と格闘していた。
「じゃ・・・じゃあ・・・・」
「言う気になったか？」
「俺の・・・・・を・・・・・・欲しい・・・」
「全然聞こえねーよ。もっと、ハッキリ言え。」
今のでもかなり頑張って言ったのだが、声が小さすぎて跡部には聞こえない。羞恥心から
涙目になって宍戸は跡部に言った。
「俺の・・・・・を・・・触って・・欲しい・・・」
宍戸にとってはこれが限界だった。一応、聞き取れたらしく跡部はその通りに行動を起こ
す。ズボンを取り払ってしまって、宍戸の熱くなっているソレに手を這わせる。
「んっ・・・あっ・・・ハァ・・・あ・・・」
「言えるじゃねーか。このあともいろいろ言ってもらうぜ。」
「んんっ・・・やだぁ・・・・何で・・・言わなくちゃ・・・いけねぇんだよぉ・・・」
「だって、お前何か一つ言うこと聞くって言ったんだぜ？。約束は守らなきゃダメだろ。」
「でも・・・ホントに・・・・恥ずかしい・・・・」
「俺は別に恥ずかしくねぇよ。」
「何当たり前なこと言ってんだ・・・アホ！！・・・あっ・・くっ・・・」
文句を言う余裕はあるが、まともに座っていられるほどの力はなかった。
「跡部・・・もう・・・座ってんの・・・キツイ・・・」
「じゃあ、逆向いて俺に寄りかかれよ。その方が楽だろ？」
「う・・・ん・・・・」
宍戸は体を反転させ、跡部に寄りかかった。体をもたれかかられると跡部は後ろから手を
回し、さっきの続きを始める。
「ふっ・・・あぁ・・・んんっ・・・」
「さあて、このあとどうして欲しい？」
「えっ・・・そんな・・の・・・・一つしかねぇじゃねぇか・・・・」
「だから、それを言えよ。もうそろそろお触りは終わらすぜ。」
ちょっと、待てよ。そんなことも言わなくちゃいけねぇのか〜。くっそー、でも、でも、
言わなきゃイカせてもらえないし・・・。
「・・・カせて・・・」
「ん、何だって？」
「イカせて・・・くれよ・・・跡部ぇ・・・・」
「おりこうだな宍戸。おねだり上手だぜ？」
「子供扱い・・・すんな！・・・うっ・・・ああっ・・・あっ・・・あぁんっ・・・！！」
跡部の言葉に怒る宍戸だったが、それ以上に跡部が与える快感がすごくて、すぐに達して
しまった。
「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」
「望み通りにしてやったぜ。満足か？」
余計に羞恥心を煽るようなことを跡部は言う。宍戸は恥ずかしさからもう泣きたくてしょ
うがなかった。
「で、次は？」
「くっ・・・まだ・・・言わせんのかよ・・・」
「当たり前だろ？」
宍戸はしばらく考えた。これ以上何か言うのはもう耐えられない。どうすれば恥ずかしい
ことを言わなくて済むか、くらくらしてきている頭で必死で考える。
「えっと・・・・」
「ああ。」
えーと、もうそろそろ慣らして欲しいなあとは思うけど、さすがに言いたくないし。跡部
が納得できて、俺もそんなに恥ずかしくないセリフは・・・。
「あとは・・・お前の好きにしろよ・・・」
「！！」
うまく逃げやがったなこいつ。確かにこれならどうして欲しいか言ってるし、宍戸にとっ
てそんなに恥ずかしくないな。
「いいのかよ、そんなこと言って。」
「ああ・・・もうお前の・・・したいようにしていいぜ・・・・」
宍戸にとってはこれで逃げたつもりだったが、ここまで言ってしまったことは逆効果だっ
た。やらしい笑みを浮かべて、跡部は宍戸を思い切り前に倒した。
「うわっ・・・何だよ！？跡部。」
そのまま倒れたというよりは、手と膝をつき、ちょうど四つん這いになるような形になっ
た。跡部は軽く指を濡らして慣らし始めた。
「いっ・・・あっ・・・」
「今日は三段階で攻めてやるぜ。俺の好きなようにしていいんだよな？」
「うっ・・・くあっ・・・ああ・・・」
いきなり敏感な所に指を入れられ、宍戸は思わず声を抑えるのも忘れ喘ぐ。跡部が言って
いることの意味はよく分からないが、うまく直接なことを言わなくてしてもらえたので、
自分の言ったことは成功したと思った。
「もうそろそろ大丈夫そうだな。」
「あっ・・・うああっ・・・！！」
自分のモノを入れてもいいぐらいにほぐれると、跡部はそのままの体勢で宍戸の中に入っ
ていった。
久々だな、この体位。でも、これくらいなら耐えられそうだ。それにしても三段階に攻め
るってどういう意味だ？
「うあっ・・・あん・・・跡・・・部・・・・」
「この体位、結構久しぶりだよな。どうよ、宍戸？」
「あっ・・・イイっ・・・はっ・・・あぁ・・・」
「もうそろそろ第二段階いくか。」
「えっ・・・？」
ぐいっ
「っ！！ああっ・・・あっ・・・やあっ・・・」
跡部は宍戸の体を起こさせた。つながったままで座るような状態され、跡部のモノが一気
に奥に入っていく。
「あっ・・・ああっ・・・ダメ・・・跡部っ・・・！！」
「これもよくねぇ？お前も奥で感じられるからいいだろ？」
「くっ・・・はぁん・・・もう・・・やだぁ・・・・」
「いやじゃねぇだろうが。そんなイイ声で泣いといて何言ってんだよ。」
「あっ・・・うっ・・・だってぇ・・・」
「そろそろ第三段階いっていいか？」
「何だよぉ・・・第三段階って・・・・」
「俺もやったことねぇから分かんねぇけどさ、こういうのだよ。」
宍戸の体をしっかり抱いて、跡部は自ら後ろへ倒れた。一瞬、宙に浮いたような感覚を感
じたあと、信じられないほどの衝撃が宍戸を襲った。
「うああっ！！」
「うわっ・・・これは結構キツイな。でも、なかなかイイ感じじゃねぇか。」
「あっ・・・あぁ・・・跡部っ・・・あっ・・あぁんっ・・・」
さっきまでは腕や足がベッドについていて、少しは衝撃が中和されていたがこの体勢では、
シーツを掴むことも跡部にすがることも出来ない。どうすることも出来ずに足をバタつか
せるが、それは下からの刺激を増やすだけでさらに宍戸を狂わせることとなった。
「跡部っ・・・跡部・・・いやっ・・・ああっ・・・！！」
「これすげぇ抱かれてるって感じだろ？最高に気持ちイイぜ。」
「あっ・・・もう・・・ダメっ・・・跡部っ・・・」
宍戸は何とか掴むことの出来る跡部の腕を強く掴み、快感に濡れた声で跡部の名を呼ぶ。
跡部は抱きしめる腕にさらに力を込め、目の前にある頬にキスをしながら、低い声で囁い
た。
「最高だぜ宍戸。お前以外もう何もいらねぇよ。」
「跡部・・・っ！・・・あっ・・・あぁ・・・」
その言葉は宍戸にとって、とてもうれしいものだった。そんなことを言われ本当に余裕が
なくなってしまい宍戸は全身で跡部を感じ、天に向かって熱を放った。それと同時に、跡
部も宍戸の中に己を放つ。
「うあっ・・・ああっ・・・！！」
「・・・宍戸！」
チョコレートのような甘い余韻が二人を包み、雪のように白い雫がどちらの体にも舞い散
る。二人は深い満足感とともに快楽の輪舞曲を踊り終えた・・・。
「満足か宍戸？」
「〜〜〜〜。お前、サイテー。さっきから何でそう恥ずかしいことばっか聞いてくんだよ。」
「ずいぶん恥ずかしいこと言ってたもんな。」
「お前が言わせたんだろ！！それも何なんだよあの体位は。」
「ああ。よかっただろ。」
「悪くはなかったけど、俺、やっぱお前の顔がちゃんと見れるのがいい。」
「そうか。じゃあ、今度はそうしてやるよ。」
後始末を終え、パジャマを着直すといつものように二人で布団に入り、話している。
「はあ、もうバレンタイン過ぎてんよな。日付変わってんもん。」
「そうだな。でも、なかなかのバレンタインデーだったと思うぜ。」
「俺もそう思う。お前にチーズケーキ作ってもらえたし。」
「また、そのネタかよ。」
「いいじゃん。ホントうれしかったんだぜ。」
「そうかよ。」
また、少し顔を赤らめ跡部は宍戸とは逆の方に寝返りをうった。宍戸は跡部の顔が見えな
いのが気に入らないので、なんとか自分の方を向かせようとする。跡部の背中にピッタリ
くっつき、いつもより少し高めの声で甘えるように言った。
「何でそっち向いちまうんだよ。寂しいー。」
これを聞いてそっぽを向いたままでいられるはずがない。跡部はくるっとまた寝返りをう
ち、くっついてきている宍戸を抱きしめた。
「ホーント、お前にはかなわねぇよ。」
「マジで？やったー。」
「言っておくけど、こういう場合に限ってだからな。」
「いいぜ。それでも。」
一つでも跡部に勝っているものがあると分かって宍戸はうれしくなった。いつものように
ゴロゴロと甘えていると宍戸はあることに気づく。
「なんかさあ、いやに静かじゃねぇ？」
「・・・そういや、そうだな。」
宍戸にそう言われ、跡部はおもむろにカーテンを開けた。
「うわあ。」
「雪か。どおりで静かなわけだ。」
「なんか部屋が暖かいから、全然気づかなかったな。」
「ああ。いい感じだよな。こういう時に雪が降ってるって。」
「じゃあ、しばらく見てようぜ。」
横たえていた体を二人とも起こして、しばらく雪を眺めることにした。雪が降っていると
いっても跡部の部屋は本当に暖かい。雪が降り続けている間、跡部と宍戸はお互いに寄り
かかり合い、いつまでも窓の外を眺めるのであった。
ＥＮＤ．
岳忍へ 滝鳳へ