街が華やぎ始めてから約一ヶ月。今日はそのたくさんの飾りが祝うある聖者の誕生日の前
日だ。そんな誰もが心を躍らせる日に樺地とジローは、都心からは少し離れた温泉宿にや
ってきていた。
「おー、すっげぇ!!こっちは雪が降ってる!!」
東京でホワイトクリスマスというのは滅多にないことだが、ここは山の上の方にある温泉
宿。少し気温が下がれば、雪が降る環境だ。クリスマスより前にもずっと雪が降っていた
ようで、部屋から見える景色は白く染まっている。
「周りが白いから電球がすげぇ目立つよな。」
「ウス。」
「超キレイだC〜。なあなあ、外に遊びに行こうぜ樺地!!」
雪はいまだに降り続いているのだが、ジローは一面の雪景色を目にし、外に出たいという
衝動を抑えられないでいる。こんな中で遊んだら風邪をひいてしまうのではないかと少々
心配になる樺地であったが、せっかく雪が降り積もっているのだ。樺地もやはり雪で遊び
たい。迷った末に樺地はいつもの調子で頷いた。
「ウス。」
「よーし、じゃあ行こうぜ!!」
部屋にいるままの格好で外に出ようとするジローを樺地は慌てて止める。
「あのっ・・・」
「何?」
「そのままの格好じゃ・・・寒いと思います。」
自分の格好を見てジローは頷く。
「あー、確かにこれじゃ寒すぎだよな。サンキュー樺地♪」
持ってきてあったもこもこのコートを羽織り、マフラーをし、手袋をつけ、帽子も被って、
完全防備でジローは樺地の方を振り返る。そして、にっと笑って一言言う。
「よーし、これで完璧だろ?そんじゃ、行こうぜ樺地。」
「ウス。」
樺地もジローと同じくらいの寒さ対策をして、ジローについてゆく。跡部についていく時
とは少し違う感覚に、何だか不思議な気分になりながらもわくわくする。そんなわくわく
感を感じながら、樺地は心の中でふっと微笑んだ。
「うひゃあー、やっぱ外は寒みぃな。」
「ウス。」
室内の温度とは全く違う外の寒さに二人は若干体を震わせる。さっきより雪の降り方は弱
くなっているものの、気温は変わらない。息を吐けば真っ白になり、周りの景色と区別が
つかなくなる。そんな中で、二人は雪を触り始めた。
「おー、この雪超ふわふわしてる〜。」
「ウス。」
「まず何しよっか?樺地。」
「・・・・雪だるま・・・」
「えっ?」
「雪だるま・・・作りたいです。」
「雪だるまかぁ。」
「ダメ・・・ですか?」
「いいや、全然いいと思うぜ!どうせ作るんだったら、デッカイの作ろうな!!」
樺地のアイディアに大賛成とジローはさっそく雪玉を丸め始める。初めは手の平に乗るく
らいの大きさだった雪玉が雪の上で転がしているうちにどんどん大きくなってゆく。
「はあ〜、これって結構重労働。樺地、どれくらい出来た?」
「ウス。」
「デケェー。さっすが、樺地だな。」
ジローが転がして作った玉より二回りは大きい雪玉を樺地は黙々と作っていた。ある程度
の大きさになると、ジローは樺地に合体させようと提案する。
「よし、こんなもんじゃねぇ?」
「ウス。」
「この大きさだと俺の作った玉の方が頭になるよな。」
「ウス。」
「じゃあ、これをここに乗せ・・・ダメだぁ。重くて持ち上がんねぇ。」
かなり大きくなった雪玉はジローの力では持ち上げることが出来なかった。そんな雪玉を
樺地はいとも簡単に持ち上げ、自分の作った雪玉の上に乗せる。
「ウスっ。」
「おー、雪だるまらしくなったー!あとは目とか鼻とか腕とかつけりゃオッケーだな。」
とは言うものの、辺りは雪で埋まっていてそれにかわるようなものは見つからない。あえ
てあるとすれば、細い枯れ枝が何本か落ちている程度だ。
「う〜ん、困ったな。これじゃ顔が作れねぇぞ。」
「大丈夫です・・・」
そう言いながら、樺地は何本かの枯れ枝を拾ってくる。それを器用に折り、短くなった枝
を組み合わせ、雪だるまの顔を作っていった。樺地の作った雪だるまの顔は、実に楽しそ
うにニコニコと笑っている。
「出来ました・・・」
「すっげー!!こんな笑顔の雪だるま、初めて見たぜ!!やっぱ樺地すげぇよ。」
「ありがとう・・・ございます。」
ジローがあまりにも褒めるので、樺地はかなり照れる。その頬は寒さの所為とはまた別の
理由で薄っすらと赤く染まった。自分と樺地が作った雪だるまに大満足なジローであった
が何かもう一歩足りないものがあるような気がした。それが何かを考えていると、ポンと
頭にそれが思い浮かぶ。
「そうだ!」
「?」
「樺地、もう一個雪だるま作ろうぜ!今度はこんなに大きくなくていいからさ。」
「ウ、ウス。」
もう一つ作ろうと言うジローの提案に少々戸惑う樺地だが、せっかくなので作るかとまた
雪玉を転がし始める。さっきよりも小さくてよいということなので、それはすぐに出来た。
ジローも頭の部分を作り終え、出来た二つの雪玉を重ねると今度はジローが顔を作った。
「よっし、でーきた♪あとはここをこうして・・・」
大きな雪だるまと同じように笑顔の雪だるまにすると、残っていた少し長めの枯れ枝を胴
体の部分に突き刺す。並んだ雪だるまの外側の腕は上を向いているのだが、内側の腕は下
を向き、ちょうど手にあたるところで重なっている。
「手・・・繋いでるように見えます。」
「だろー?こういうふうにした方が何か本当に楽しそうでよくねぇ?」
「ウス。」
手を繋いだ二つの笑顔の雪だるま。その大きさの対比から樺地には自分とジローのように
見えた。何だか嬉しいなと思っていると、ジローが手袋のままきゅっと手を握ってくる。
「俺達も手繋ごうぜ。」
「ウス。」
心を読まれたようで、一瞬ドキっとした樺地だったが、素直にジローの手を握り返す。ジ
ローも樺地と同じようなことを考えていたので、雪だるまと全く同じようになったことが
嬉しくてたまらなかった。
「へへー、何かちょっと照れるよな。」
「ウス。」
「雪もさっきより強くなってきたし、そろそろ宿ん中入ろっか。」
「ウス。」
雪だるま作りに夢中になっている間に、雪はかなり強くなってきていた。もちろん寒さも
それだけ厳しくなっている。しかし、二人の心の中はそんな外の気温とは対照的にポカポ
カとすっかり温まっていた。
宿に戻ると二人は冷えた体を温めに行こうと温泉へ向かう。浴衣と洗面道具を持って脱衣
所に入るが、そこに人影はない。ゆっくりと温泉へと続くドアを開けてみると、やはりそ
こにも人影はなかった。
「誰もいないみたいだな。」
「ウス。」
「何か貸し切りチックでE〜感じじゃん。樺地、早く入ろうぜ!」
「ウス!」
人がいないうちにゆっくり楽しもうと二人は雪で濡れた服をちゃっちゃと脱ぎ、浴室の方
へ移動する。まずは髪と体を洗わないとということで、二人は木で出来た桶と椅子をシャ
ワーのあるところまで持っていった。
「せっかくだからさ、背中流しっこしようぜ。」
「ウス。」
髪をそれぞれ洗った後、二人は背中の流しっこをする。まずは樺地がジローの背中を、そ
の後に今度はジローが樺地の背中を流した。ジローが背中を洗ってくれている間、樺地は
手に泡をたくさんつけ、それでシャボン玉を作り始める。
プワ・・プワ・・プワ・・・
「わあー、マジマジスッゲー!!どうやってんの!?樺地。」
樺地の手から作られるシャボン玉を見て、ジローは大はしゃぎ。ジローがそんな反応をし
てくれるのが嬉しくて、樺地は次から次へとシャボン玉を作る。
「うっわあ、おもしれー!!樺地、俺にも教えて。」
「ウス。」
シャボン玉の作り方を樺地に教えてもらい、ジローもシャボン玉を作り始める。二人でそ
んなことをして遊んでいると、その風呂場はシャボン玉だらけになった。フワフワと浮か
ぶシャボン玉を見て、ジローは目をキラキラと輝かせる。
「超いっぱーい。これはこれで、何かクリスマスって感じだよな!」
何がクリスマスっぽいのか分からないが、ともかくジローにはそう見えるらしい。
「ジローさん、そろそろ温泉の方に入りませんか?」
シャボン玉がだいぶ弾けて消えてきているのを見て、樺地はそんなことを言う。せっかく
温泉に来たのだ。湯船に入らなければ意味がない。
「そーだね。そろそろ入るか。」
シャボン玉遊びに大満足なジローは、かなりご機嫌な様子で答える。二人ともシャボン玉
と体を洗った泡で石鹸だらけだ。そんな泡をシャワーで流し、二人は湯船の中へゆっくり
浸かった。
「ちょっと熱ぃくらいだな。」
「ウス。」
「でも気持ちE〜。ふあー、何か眠くなってきちゃった・・・」
「こんなところで、寝たらダメです・・・」
「うー、だって眠いんだもんよ。」
雪遊びとシャボン玉遊びですっかり疲れてしまったジローは、湯船に入った途端、激しい
睡魔に襲われる。樺地の忠告も耳に入っているのだが、やはり睡魔には勝てない。
「あー、ダメだ。もう目開けてらんない・・・」
目を閉じた瞬間、スースーと寝息を立て始める。よくこんな中で眠れるよなあと感心しな
がら、樺地はジローがお湯の中に沈まないように体を支えてやった。
(もう少しくらい入ってても平気だよな。)
ジローが眠ってしまったので、すぐにでも出ようかとも思ったのだが、雪遊びで冷えた体
を温めるにはもう少し入っていたい気もする。結局、ジローを腕に抱えながら、樺地はし
ばらく温泉に浸かり、温泉の温かさを思う存分楽しんだ。
温泉の中で眠ってしまったジローを浴衣に着替えさせ、樺地はジローをおぶって部屋へと
戻る。部屋の中はつけっぱなしにしていた暖房のおかげでいい感じに暖まっていた。
(どうしよう。夕飯まだだから、布団はまだ敷かない方がいいかな。)
ジローを布団に寝かせたいのは山々なのだが、まだそれほど遅い時間でもないので、夕食
も来ていない。どうしようかと悩んだ末、座布団を枕代わりにし、掛け布団だけジローの
上にかけてやった。ジローが寝てしまうと樺地は暇になってしまう。夕飯までは時間があ
るので、暇つぶしに絵でも描いていようと樺地は鞄の中からスケッチブックを出した。
(ここから見える景色、綺麗だから描いておこうかな・・・)
窓から見えるイルミネーションで飾られた雪景色を樺地はスケッチブックに描き始める。
しばらくカリカリと鉛筆を動かしていると、突然ジローがむくっと起き上がった。
「ジローさん?」
「む〜、俺、こっちがいい〜。」
布団に包まりながら、ジローは絵を描いている樺地の側まで来て、コロンと樺地の膝を枕
にして寝転がる。そして、またすぐに寝息を立て始めた。
「寝ちゃった・・・」
自分の膝がいいと言って再び眠ってしまったジローを見て、唖然としながらも樺地は小さ
く笑う。膝にジローの体温を感じながら、絵を描くのを進めていると女将さんが夕食を運
んできた。
「失礼します。」
「ウス。」
「お夕飯をお持ちしました。」
「ありがとう・・・ございます・・・」
夕飯が運ばれてきたので、樺地は机の上に出していたスケッチブックや鉛筆を片付ける。
「あら。」
お膳を机の上に置きながら、女将さんはジローが樺地の膝枕で眠っているのに気がついた。
「お連れさんはお友達?」
「・・・先輩です。」
「あら、先輩。可愛らしい先輩ねぇ。お夕飯どうします?先輩の分は後でお持ちした方が
いいかしら?」
「いえ・・・そのままでいいです。」
やはり夕飯は一緒に食べたいと樺地はジローの分も置いていってもらった。
「それでは、ごゆっくり。」
出て行くときの女将さんの顔は微笑ましいものが見れたと嬉しそうな表情であった。それ
が何となく分かってしまったため、樺地は少し恥ずかしくなる。しかし、ジローの気持ち
よさそうな寝顔を見ていると女将さんがあんな反応をするのも分かるなあと思ってしまう。
「ジローさん、起きてください。」
「んー・・・」
「ジローさん、夕飯が来ました。早く食べないと冷めちゃいますよ。」
「うー、ご飯〜?」
夕飯と聞いてジローはゆっくりと起き上がる。寝ぼけ眼で机の上を見てみると、そこには
クリスマスムード満点のお膳が置かれていた。お膳なので当然和食ではあるのだが、その
中身は赤や緑、白などクリスマスカラーのおかずで彩られ、クリスマスケーキの定番、ブ
ッシュ・ド・ノエルもデザートとして添えられている。これももちろん和風アレンジで、
クリームにはきな粉と抹茶が使用されていた。
「うわあ、何か和風クリスマス御膳って感じー。スッゲー。」
そんな豪華な夕食を前にすれば、嫌でも目は覚めるだろう。冷めないうちにと二人はその
クリスマス御膳を食べ始めた。そこまで値の張る宿ではないのだが、味は絶品。まさにク
リスマスにふさわしい御馳走となった。
「超腹いっぱーい。ここの料理、メチャクチャうまいな!!ケーキも変わった味だったけ
どうまかったし。」
「ウス。」
夕飯に大満足の二人は食休みということで、窓際の椅子に座りゆったりとくつろぐ。そん
なふうにくつろぎながら、二人はキラキラと瞬きを繰り返している雪の中のイルミネーシ
ョンをしばらく眺めていた。
しばらくぼーっとしていた二人だったが、樺地が何かを思い出したように突然椅子から立
ち上がる。
「どうしたの?樺地。」
「ちょっと・・・」
言葉を濁すようにして、樺地は何かを取りにいった。ジローは頭にハテナを浮かべて、樺
地のいる方へ目をやる。ジローのもとへと戻ってきた樺地は、腕に少し大きめの包みを抱
えていた。
「何、それ??」
「クリスマス・・・プレゼントです。」
クリスマスらしく緑の袋に赤いリボンで口が閉じられているプレゼントを樺地はジローに
手渡した。クリスマスププレゼントと聞いて、ジローの顔はパッと明るくなる。
「うわあ、超うれC〜vv開けてみてもいい?」
「ウス。」
わくわくしながら、ジローはリボンを解き、緑色の袋の中からその中身を出す。中から出
てきたもの、それは晴れた日の夕焼けの色にも似たオレンジ色の膝掛けだった。膝掛けで
はあるのだが、それはかなり大きめで、使いようによっては昼寝をするときの掛け布団と
しても使えそうだ。
「サンキュー樺地。最近、昼寝してるとメチャクチャ寒くってさぁ、ちょうどこういうの
が欲しいと思ってたんだよね。」
「ジローさん・・・どこでも寝ちゃうんで、風邪ひかないようにと思って。」
「樺地やさC〜。マジで嬉しいぜ。あんがとな。」
夕焼け色の膝掛けを抱えながらジローは満面の笑みを顔に浮かべる。もう一度広げてみて、
まじまじとその膝掛けを眺めていると、隅の方に何かを発見する。
「あれ?」
膝掛けの角の部分にジローは一匹の羊を見つけた。毛糸で刺繍されたようなその羊は、も
とからついている模様とは思えないような雰囲気があった。
「ここにいる羊、この膝掛けに初めからついてた?」
「いえ・・・それは自分が後で刺繍しました。・・・・なかった方がよかったですか?」
不安気にそう尋ねる樺地だが、それを聞いてジローは感動。樺地が後で刺繍をしてくれた
ということは、この膝掛けは世界で一つだけしかないということになる。
「全然そんなことねぇよ!!あった方が断然いい!樺地、ホント器用だよな。超可愛いし、
あったかさ倍増ー♪」
ジローのその言葉を聞き、樺地はホッとする。喜んでもらえてよかったと樺地が嬉しく思
っていると、ジローもどこからともなくプレゼントを取り出した。そして、それを樺地に
渡す。
「俺からもクリスマスプレゼントー。メリークリスマス樺地♪」
「ありがとうございます・・・」
ジローから受け取ったプレゼントの包みを樺地は丁寧に開ける。中から出てきたのは、一
冊の絵本であった。表紙と題名から推測するとどうやらクリスマスの話らしい。
「その絵本、超いい話なんだぜ!心があったまるっていうか、うん、そんな話ー。」
「ちょっと読んでみてもいいですか?」
「全然オッケー。俺も見る〜。」
どんな話か気になると樺地は早速その本のページをめくった。ジローももう一度読みたい
と樺地の隣に移動し、一緒にその絵本を読む。
その絵本の内容は、森に住むとても仲のよい二人の小人の話で、クリスマスの日の出来事
が色彩豊かに描かれていた。一人の小人はもう一人の小人を喜ばせようと思って、いろい
ろなことをするのだが、それがことごとく失敗してしまう。一生懸命なのだが、どうして
も相手を困らせる結果になってしまうのだ。最後の最後で、クリスマスにしか咲かない花
をやっとの思いで手にいれ、それをプレゼントとして渡そうとするのだが、渡す前にその
花もしおれてしまった。本当に自分はダメな奴だと泣きそうなほどその小人がへこんでい
ると、もう一人の小人はその小人のことをぎゅっと抱き締め、笑顔でお礼を言う。迷惑ば
っかりかけたのにどうしてと不思議そうな顔をしている小人に、もう一人の小人はニッコ
リ笑って、「今日してくれたことには、心がいっぱいつまってた。この花にだって、たく
さんたくさん君の心が入ってる。こんなに嬉しいプレゼント、他にはないよ。」と言う。
それが嬉しくて花をあげた小人は泣きながら笑顔になる。お互いを大好きだと思う気持ち
を行動で表そうとした小人と言葉で表そうとした小人。お互いの気持ちが分かると、どち
らも心の中が温かくなる。「大好き」が溢れるクリスマス。どこかにいるサンタクロース
は、そんな心で感じるぬくもりをこの二人の小人にプレゼントしたのであった・・・・
そんな話を読み終え、樺地とジローはほんわかとした気持ちになる。
「いい話・・・ですね。」
「だろ?絵が綺麗だったからさ、パラパラって読んでみたらハマっちゃって。んで、樺地
にも読ませてあげたいなあと思って、クリスマスプレゼントにしたのー。」
「すごく嬉しいです。ありがとうございます。」
絵本を閉じ、ふっと柔らかく微笑みながら樺地は言う。そんな樺地の顔を見て、ジローは
ニッと笑いながら、あの小人のようにぎゅっと樺地に抱きついた。
「ジローさん・・・?」
「樺地のプレゼントも超心がこもってたぜ!樺地の大好きすっごく伝わった。本当に本当
にあんがとな!」
「ウス。」
「俺もあの小人みたく樺地に迷惑かけてばっかかもしれないけど、樺地のこと、すげぇ好
きだと思ってるぜ。だから、これからもよろしくな!」
「迷惑だなんて思ってないです・・・。自分もジローさんのこと好きですから・・・」
そんな樺地の言葉を聞き、ジローはほのかに赤くなりながら抱きついている腕を緩め、樺
地の顔を見上げる。その表情は、もう嬉しくて嬉しくてどうしようもないというような顔
であった。
「へへへ、うれC〜。なあ、今日はクリスマスだしさ、一回くらいしてもいいよな?」
「?」
ちゅっ
「!?」
「これも大好きだっていう気持ちいっぱいこもってるからな!」
いきなりキスをされ、驚く樺地であったが全く嫌ではなかった。ドキドキする鼓動を抑え、
樺地は自分でも驚くような行動に出る。
ちゅ・・・
「お返しです・・・」
さっきジローがしてくれたように樺地も自らキスをした。もちろん唇にだ。思ってもみな
い樺地の行動にジローのテンションは一気に上がる。
「うっわあ、マジ感動ー!!すっげぇ嬉しい!!」
「ウ、ウス・・・」
「何か今日はテンション上がってきたー。クリスマスになるまで起きてられるかもー。」
絶対日付が変わるまでは起きていられないと思っていたジローだったが、さっきも寝たこ
ともあり、このテンションなら起きていられるとはしゃぎまくる。そんなジローを見て、
樺地も楽しくなってきた。
「なあなあ、樺地。今日も明日もずーっと一緒にいて、いろんな楽しいことしような!」
「ウス!」
クリスマスまであと数時間。この時間も含め、二人は楽しいクリスマスを過ごす。どこか
にいるサンタクロースは、あの小人達と同じように、この二人にも心で感じるぬくもりを
プレゼントしてくれたようだ。
END.
★他のも見てみようと思う方は・・・★
−跡宍− −岳忍− −滝鳳−